メカばか講座  第9時限  「エンジン・動力性能」

レシプロエンジン詳細
ここでは、一般的な自動車エンジンであるレシプロエンジンについて説明します。
ちなみに、レシプロエンジンとは、レシプロケーティングエンジンの略で、日本語にすれば「往復運動機関」ですが、こ
れは、固定された円筒形のシリンダ内を往復運動するピストンから構成され、この往復運動を回転運動に変換して、
利用するというものです。

ボアとストローク
ボアが大きい方がいいか、ストロークが大きい方がいいか。これはむずかしい。結局のところ、普通にある自動車
のエンジンはニアスクエアのものが多く、高回転型のものほど、ショートストロークという傾向はある。
ショートストロークの利点は、吸入・排気面積が大きく取れること、ピストンスピードを低く抑えることができること、が
大きいだろう。ピストンスピードが遅く出来れば、高回転で回すことが可能となる。つまり、高出力が得やすい。
ただし機械的な回転の限界もあるので、青天井ということはない。
ショートストローク、ビッグボアになると発生する問題は、エンジンの全長が長くなること。だからV型エンジンにしたり
して、全長を短くしようとする。ランチアにもあったが狭角V型エンジンなどはまさにその目的だろう。
また現在はエンジンも軽量化で、アルミになったりブロック自体も薄肉になりつつある。ビッグボアを実現するために
必死になっている。
しかし、ピークパワーだけを求めるならこれで良いが、過渡特性も考えると、ビッグボアが絶対良いとはいいがたく、
高トルク・フラットなトルク特性を得るために、あえてロングストロークを採用したエンジンも存在する。
この辺りは各メーカーの考え方の違いなので、どちらが絶対良いとは言い切れない。

クランクシャフト
ピストンは往復運動するだけだが、それを回転運動に変換するものがコンロッド(コネクティングロッド)とクランクシャ
フト。コンロッドとクランクシャフトの間にはジャーナルベアリングがあるが、実はこれがエンジンの性能のカギを握っ
ている。クランクシャフトは真っ直ぐでないと、バランスが良くなく高回転で回すことが出来ない。しかも、しっかり確実
に支持できていないと、共振して振動が発生したりする。
このため、一時はジャーナルの数を増やすことが流行った。4気筒だとベアリングが3個だったのが5個になったり。
アルファのF1用V12など、ベアリングが7個もあった。(対するフェラーリは4個)
しかし、ベアリングの増加はフリクションロスの増大や重量の増につながる。それで、1ヶ所あたりのベアリングの幅
を小さくすることが流行った。しかし、次の問題はベアリングキャップの剛性が低下するということとなった。
最近の流行は、ベアリングキャップ一体型。最近はさらに進んで、2サイクルのレーサーの様にクランクケース分割
式のようなものもある。

バルブ
バルブは日本語で言うと「弁」のこと。駆動方式によりいろいろあるが、OHV、OHC、DOHCの3種類が一般的。
OHVはオーバーヘッドバルブの略で、シリンダーヘッドの上にバルブがあるということ。ではこれがなぜ良かったかと
いうと、それ以前はバルブ駆動方式はSV(サイドバルブ)だった。フラットヘッドとも言う。バルブがシリンダーブロック
に付いていたわけ。サイドバルブはバルブ位置によりTヘッドとLヘッドがあったが、吸入効率の悪さから廃れた。しか
し、シンプルで耐久性や整備性が良く、農機具などでは現在も使用されている。
これに対しOHVは吸入効率改善のため、バルブをヘッドに設け、ポートをストレートに近い形状にしようとしたもの。
カムシャフトはサイドバルブと同じくシリンダーブロックに付いている。また高速運転のため剛性を高める目的でプッ
シュロッドを短くしてカムシャフト位置を上に上げた、「ハイカム」も多い。(ハイリフトカムのハイカムとは違う)
OHVの構成は、カムシャフト、プッシュロッド、ロッカーアーム、バルブといった具合だが、ここからプッシュロッドを
廃し、カムシャフトをシリンダヘッドへ持ち上げたのが、OHC。オーバーヘッドカムシャフトと言う。ロッカーアームの
ないものは俗に「直押し」と言っていた。
OHCはプッシュロッドのない分、バルブタイミングなどがずれにくく高速回転にも耐え、高性能エンジンの代名詞と
なっていった。このOHC(SOHC:シングルオーバーヘッドカムシャフト)を進化させたものがDOHC(ダブルオーバ
ーヘッドカムシャフト:ツインカムと言う場合もある)で、吸気と排気を独立したカムで駆動する。
バルブは今や笠の形をしたものばかりだが、かつてはスリーブバルブと言うものやロータリーバルブのものも存在
した。バルブの中には、軽量化のためチタンなどのものや、冷却のため金属ナトリウムを封入したものもある。
また、バルブを駆動するものはカムシャフトだが、それを戻すのはスプリングを使用するタイプが多い。しかし、強制
的にリターン側もバルブを駆動するものを「デスモドロミックバルブ」と言い、一部のものに使用されている。

その1   その3