メカばか講座  第9時限  「エンジン・動力性能」

動力性能
動力性能を語る前に、「トルク」の話をしなければならない。
トルクは、「回転力」と呼ばれているように、軸を中心として、ある腕の長さのものを回転させる時、必要な力の
大小を表す。現在はSI単位系に移行したことにより、Nm(ニュートンメーター)で表されるが、昔はkg−mで呼
んでいたので、この単位が浸透しており、今でもカタログにはこの単位も付記してあるはず。
同じように馬力も昔はPS(1メートル馬力)と呼んでいたが、現在はKW表示になっている。でも、モーターみた
いで何かしっくり来ないんだよね。

ここでは旧単位で表現させてもらいますのであしからず。

トルクと馬力の関係は、T≒716/N=PS という式を覚えさせられた記憶がある。
ここで、Tはトルク、Nはエンジン回転数です。
716という定数は、何から来ているかというと、Wと関係がある。
クランク軸からrの距離にクランクピンがあるとして回転数Nの時クランクピンの動いた距離Lは、
L=2πrN となる。
軸トルクTは T=力×腕の長さ
仕事 Wは  W=力×動いた長さ(距離・円弧の長さ) 
となり、ここに先の式を代入すると、
W=2πNT となる。この式を加工すると最初の式が導き出されるという訳。えっ、わざわざ加工しなくてもこれ
でいいじゃないかって・・はは、そうかもしれないね。

ただし実際のカタログに載っている数値はこの「正味軸出力」でなく、JISで気圧、温度、湿度など測定条件を定
めた「修正軸馬力」「修正軸トルク」を使用している。

トルク、馬力と来たところで、今度は燃料消費率。
燃料消費率は、昔の自動車のカタログにはたいてい載っていたが、現在ほとんど見かけることはなくなってしま
った。これも、10・15モードに代表される燃費測定方法の方が実際に近いことから解りやすいということなのか
も知れない。(燃費・排ガス対策は別のゼミで)

性能曲線の読み方
最近は性能曲線も、馬力とトルクしか書いてないものも多い。1つの図に2本あるいは3本の線グラフで書いてあ
るので解りにくいが、左軸が出力、下がエンジン回転数、右軸にトルクと燃料消費率が書いてある。
読み方は下のエンジン回転から上に上がり、グラフの交点で読みとる。

グラフからは「点」での性能のほか、曲線によりエンジンの性格が読みとれる。カタログ表示の馬力やトルクは、
「最高出力」「最大トルク」でしかないので、だまされやすいから注意しよう。
実際の常用回転域での能力を読みとることが、賢い「性能曲線図の読み方」だと思う。現実的には2000rpmか
ら4000rpmくらいか。
最近はターボ車が多いこともあり、きれいな曲線の性能図も少なくなった。
だいたいは、トルクに谷間のあるものが多くて、ATなら勝手にシフトポイントを調整してしまうから大した問題には
ならないが、マニュアル車だと引っ張った時にトルクの谷間がはっきり解るものもある。
しかし、高性能エンジンはピークパワーでは優れているが、そんな使い方は常時するわけでもない。過渡特性で
はノーマル仕様のエンジンの方が良いという場合も多い。
通常の使用形態をよく考え、「数値だけで使い勝手の悪い高性能マシン」とならない様に気を付けたいものだ。

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