農機具と建設機械  
農機と建設機械を笑うものは農機と建設機械に泣く

農機具です。というと笑う人も多いかも知れないが、最も自然の恐ろしさに対して立ち向かえるパワーを持つ重機械。これが、農機具とそこから発展した建設機械というものだ。

自動車の元ともなった発動機(エンジン)が開発された当初、これを利用した自動機械は、まずレース用、軍用、開拓用の3種に分化した。この3種の機械の特徴は、「より速く」「より強く」「より安全と信頼性」という大きな設計思想のもとに作られており、今でもその色合いは強く残っている。

レース用自動車と農機や戦車のどこに共通点があるんだ、という人もあろうが、実はこの考え方を理解すれば、それが良く見えてくるはず。

例えば、ポルシェという車がある。有名なスポーツカーではあるが、その創始者のフェルディナント・ポルシェ博士は、軍属として軍用航空機のエンジンや戦車の設計をしていて、戦後とらわれの身になっていたのは有名な話である。ポルシェは農耕用トラクターでも有名で、かつて日本のイセキと技術提携もしていた。グループCなどで活躍したイセキポルシェレーシングチームは、この流れをくむものとしてCMでも流れていた。また、日本のコマツは80年代にイギリスのロータスと組みF1に参戦。レース関係者に衝撃を与えた。当時はイスズもF1用エンジンの試作などしているが、なぜ重機メーカーがF1だったのか。これには秘密がある。

農機具から発展した建設機械は、「より安全で信頼性の高い」モノづくりを目指していたのは明らかだ。

建設機械はサスを持たないものが多い。まあ必要性がないからで(サスなどが仮に付いていたら土の敷き均しなどの精度を低下させる)はあるが、細かい土木的な精度向上のため自動的にブレード押し付け圧を制御したり、車体が振れてもバケットやブレードは元の位置のままにできるとか、転倒対策として荷重が急激に変化しても車体は安定させるとか、この建設機械用の姿勢制御技術こそが、現在の「アクティブサス」関連技術の元になったのは、疑いもない。この技術は「安全」が元々の発想であるが、これをレースに当てはめると、ドライバーに対する負荷の低減ということになる。ドライバーへの負担が軽くなれば、速く走らせることに集中できる、という理論だ。さらに、建設機械でもよく使われる、エンジンマネジメント技術もトラクションコントロールや姿勢制御技術の一部になっている。

ここまで読んで、目からウロコの人居ませんか。農機具のこと笑えないでしょう。でも、そのような面もあるかと思えば、エンジンなど未だにサイドバルブのものがあったり・・やはり農機具と建設機械は奥が深い。

我が家の農業用機械
ISEKI 15ps
我が家のトラクター1号機、ランドホープ150。イセキのイメージカラーは青。40年くらい使用。

ISEKI TQ163 16ps
2022年にトラクターを2号機に更新。JAさんのお薦めは25PS級の機械だったが、我が家は自分の所で食べるくらいしか作らないし、設備投資倒れになりそうで、極力投資額を抑えたかった。しかしながら安いと言えども最新の機械。性能に不満はない。トラクションがすごく、アクセル不用意に開くとフロントが浮くくらい強烈。唯一の問題は出来映えの悪さを機械のせいに出来なくなったことか・・

ハイテクとローテク

農機・建設機械はその歴史が長くて、現在までの自動機械の技術の見本市と言ってよい。しかしなぜ、現在自動車などで使われなくなった技術がいまだに残っているのか。

それは「変える必要もなかった」からに違いない。農機・建設機械は「より安全で信頼性の高い」ということは先に書いた。「より速く」は二の次。とりあえず関係がないところは進化しなかったため、違う方向へ進化したという訳だ。イメージ的には「オーストラリアの動物」みたいなものだろうか。

法律でも、農機・建設機械は排気ガス対策などの適用が違い、最近まで野放し状態だったのも原因かもしれない。エンジン自体も自動車は高出力化したのに対し、建設機械などはトルク重視であったりする。コストの関係で燃料も安い燃料の使用が多い。

まあそんなことから、今でもサイドバルブエンジンやドディオンアクスル、古いタイプの等速ジョイントなどが使われているのだろう。

 次のページ