メカばか講座 第3時限 「トランスミッション、クラッチ、ジョイント」

クラッチ
クラッチは、断続装置のことだが、クラッチ付きというと、通常はマニュアル(手動操作)トランスミッション車のことを指す。
しかし、クラッチはいろんなところに付いているんだね。例えば、オートマチックトランスミッションでもフロントクラッチ、リヤクラッチがあるし、ローリバースブレーキ、ワンウェイクラッチもクラッチと見れば、6個以上のクラッチがミッションの中にある。
デフの中にもクラッチがある。ノンスリップデフなどはまさにクラッチを備えているものの代表と言ってよい。

ここではエンジンの後ろに付いている、通常のクラッチについて解説する。
クラッチは大きく分けて、摩擦クラッチ、流体クラッチ、電気クラッチがある。流体クラッチはフルードカップリングやトルクコンバータのことで、電気クラッチは、電磁式や磁性粉体式などがある。大型車などにたまに見られる。
小型車や中型車での主流は摩擦クラッチで、単板式、多板式、コーン式、そして、それぞれ乾式、湿式がある。遠心式もある。
一般の乗用車に使われるのは、乾式単板か多板で、湿式単板や多板は主に二輪車に使われる。
クラッチは自動車の場合、通常はペダル操作式で、手動は二輪車で使われる。農機や建設機械ではレバー式のものも多い。
クラッチは「動力伝達を可変で行うことができ、しかも接続したら滑らない」という、相反する性能が要求され、この結果、現在の構造に落ち着いている。近年大きく変わったと言えば、スプリングのダイアフラム式が多くなったことくらいだろうか。ダイアフラムスプリングは、レリーズレバーが無く、スプリングがワイヤリングを支点として反転する時にリトラクティングスプリングを引き上げる。これに接続されているプレッシャプレートが持ち上がるという訳。
クラッチの操作は、ワイヤー、ロッド、油圧などがあるが、乗用車では油圧式が多くなってきている。二輪車は現在も特に小型のものなどではワイヤー式が多い。
伝達効率については、摩擦クラッチにおいては100パーセントのものが多いが、フルードカップリングやトルクコンバータでは、ロックアップ付きのもの以外では100パーセントにはならない。

ジョイント
ジョイントは、接続部のことだが、シャシで一般にジョイントと言うと、プロペラシャフトやドライブシャフトに付くユニバーサルジョイントのことを指す。
プロペラシャフトに使用されるジョイントは、フックジョイントと呼ばれ、十時形のスパイダとジャーナルからなる。ただし、フックジョイントには弱点があり、角速度の変動が生じる。これは交差角が大きくなるほど顕著で、そのため2組使用して角速度変化を相殺させている。
フックジョイントの伝達角度の制限は一般に12から18度とされていて、これでは、前輪駆動車など、大きな角度になるものにはホイールの回転速度変動が大きく使用できない。ここで考えられたのが「等速ジョイント」というものである。等速ジョイントにはフックジョイントを2個連結したような、トラクタジョイント、ダブルクロスジョイントと、特殊な構造のベンディックス、ゼッパ、バーフィールド、ダブルオフセットなどがある。現在はほとんどの車種で、デフ側にダブルオフセット、ホイール側にバーフィールドが使用されている。大型車や建設機械ではダブルクロスジョイントもよく見かける。
このほかに、特殊なものとして、農機などではゴムリング式のフレキシブルジョイントが、また、ユニバーサルジョイントとスリーブジョイントを兼ねたようなトラニオンジョイントというものもある。


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