山野草について    高山植物のページはこちら
この飛騨というところは、都会に比べると自然の豊かなところであるのは間違いありません。しかし、近年は特に都会からやってくる人々が「根こそぎ」山野草を採取しています。地元の人は非常に迷惑しているのです。山というものには当然「所有者」がいます。その山の恵みで生計をたてている人はたくさん居ます。入札で山菜やきのこを採る権利を買っている山もあります。
そんなことを知ってか知らずか、他人の土地に無断で踏み入り何かを持って行く人のことを世間では「泥棒」と言います。
山で土地所有者に会って「泥棒」呼ばわりされて追いかけられ捕まったり、熊などの動物に攻撃されても文句を言うことは本来許されません。
「根こそぎ取るな」「とるなら写真」「山野草は山で育つもの」
以上のことを念頭に置き、甘い考えを捨て正しい山行にしましょう。

片栗(かたくり)
カタクリは、野の花の中でも早春に咲く「春の女王」とも言われる人気の高い花だ。群生地は保護されているところがほとんど。カタクリの根からは片栗粉が取れるが、現在市販されている片栗粉のほとんどはイモから作られていて、カタクリ100パーセントの品物など見たことがない。


笹百合(ささゆり)
ササユリは、初夏の花の中でも人気ナンバーワンだろう。看板を掲げたりするが(札止めと言って札が下がっていたら採らないというのが山菜採りの最低のマナー)、そのようにしていても無くなってしまう。うちのじいちゃんはササユリ山を作ろうと、種から育てている。


岩梨(いわなし)
イワナシは山に登った時によく見かけるが、低山ではあまり見かけなくなってしまった。庭に植えてもなかなか根付かず、栽培は難しい。山で見るだけにしてほしいものである。


春蘭(しゅんらん)
シュンランは、山野草では代表的な野生ランであるが、以外とたくさん生えているものである。花が咲いていない時期には雑草にしか見えず、乱獲されにくいのだろうか。


羅生門蔓(らしょうもんかずら)
カキドオシにイメージが似ているが、もっと大型の花。名前の由来は、花の形が羅生門で腕を切り落とされた鬼女の腕に似ているからだとか。


虎杖(いたどり)
トラの杖と書いてイタドリ。すっくと立派なイタドリが生えているのを見ると、なるほどと思う。花は秋に咲くが、この植物はそれ以前に山菜として有名。スカンポの別名もあり、酸っぱい味を知っている人も多いと思う。食べる時はアク抜きを十分にして、煮て食べる場合が多い。北アルプスの山では大型のオオイタドリがよく生えていて、「いたどりヶ原」などという地名もある。


十二単(じゅうにひとえ)
ジュウニヒトエは、言うまでもなく着物の十二単からその名前の由来がある。細かい花がたくさん付いているのを十二単に見立てたものだが、昔の人の想像力はすごいものだと思う。健胃に薬効がある。左の写真のように群生する場合が多い。
 

蛇苺(へびいちご)
子供の頃、よくヘビイチゴを摘んで遊んだものだが、実はこの草は薬草でもある。煎じて解熱などに使うのだとか。


垣通し(かきどおし)
癇取り草の別名もある。垣根を通ってつるが伸びていくのが語源だとか。薬用で、癇取りに使用したり、糖尿病、尿管結石に効くという。


傍食(かたばみ)
カタバミもクローズアップすると、すてきな花に見えるから不思議なものだ。薬用で、寄生性皮膚病に効く。


キランソウ
ジゴクノカマノフタという別名もある。これも薬用として、咳、解熱、下痢止めに効く。


草の黄(くさのおう)
ケシ科の毒草だが、薬用にもなる。薬効は、湿疹やいぼ、たむしなどの皮膚病に有効とされる。


ミヤマキケマン
ケシ科の毒草。誤用すると嘔吐、悪酔い症状、心臓障害を引き起こす。


ムラサキケマン
これもケシ科の毒草。症状はミヤマキケマンと同じ。


苦菜(にがな)
キク科の花で、葉や茎に苦みがある。


踊り子草(おどりこそう)
シソ科で、名前の由来は花の形が笠を被っておどる人の形に似ているからという。帰化植物に右の「ヒメオドリコソウ」があり、関東を中心に勢力を拡げつつある。
 

山吹(やまぶき)
ヤマブキは黄色い花の代表とも言えるだろう。山ではかなり目立つ。


菫(すみれ)
すみれ。春の花の中でも、大好きな花のひとつです。日本は「すみれ天国」と言われるくらい、スミレの種類が多いらしい。子供達は、栽培ものの「三色すみれ」のような大きな花が好きなようだが、僕個人としては、スミレは、山に1株ぽつんと生えている、あのささやかな風情が好きだ。スミレは平野でも一般的に見られ(よく河原などに生えている)、この葉の長い、名称もただ「すみれ」というものを思い出すだろう。色もほんとの「スミレ色」。
我が家の近辺は標高はそれだけ高くはないが、(465m)種類としては山岳系のスミレが多い。タチスボスミレは中高地ではもっともスタンダードなものだろう。なお、もう少し標高が高くなると黄色いスミレが夏まで見られる。
 
ここらでは一般的なタチツボスミレ(裏山)          白い小さなスミレ(花の大きさ約7mm、裏山)

 
ちょっと色と模様の変わったもの(裏山)           野生化したスミレの一種(土手)

三色スミレもこのような小さなものが好き(車庫の前)

藤(ふじ)
藤の花も春の山ではスタンダード。林業をやっているところでは目の敵にされる藤だが(巻き付いて木を枯らす)、花はきれい。藤棚にしたりするが、僕はやはり山で他の木に巻き付いている状態で咲いているものの方がきれいだと思う。藤の花と言えば、「クマバチ」がお約束で、だいたいどの木にもいる。注意しよう。

山藤

撫子(なでしこ)のなかまたち
左は図鑑で調べると、ナデシコの仲間の「タカネミミナグサ」だと思うが、なんと、「絶滅危惧種」と表示されている。実はうちの裏山はすごく貴重な山なんだろうか。小さくてかわいい花。右は、ミミナグサで、平野でも普通に見ることができる。

 

下の「ハコベ」もミミナグサと同じく、実はナデシコの仲間なんである。どこにでもあるので気にもとめられないが、立派な「春の七草」のひとつ。



水芭蕉(みずばしょう)
飛騨には水芭蕉の咲く有名なところが数多くあり、とくに珍しい花ではないのですが、都会の人にはやはり珍しいのだろう。群生する水芭蕉とリュウキンカ、ザゼンソウのトリオは湿原の主だと思う。水芭蕉は湿原にあるときは可憐なものだが、平野に持ってきたりすると巨大化し、あまり見れたものでない。「やはり野におけ水芭蕉」といったところである。飛騨で有名なのは、天生(あもう)やニコイ高原、小鳥峠、荘川、せせらぎ街道外。

 

たらの芽
春の山菜の王様と言えば、やはり「たらの芽」でしょう。やはり、天ぷらが美味しい。ただ、おいしいだけあって、たらの芽は、びっしりと棘でその身を守っている。林道などを作ると、どこからともなく生えてくる生命力の強い木。種の活着が良いらしい。いったん大きくなると根が太くなり、なかなか手強い。




蕗の薹(ふきのとう)

ふきのとうは平野でもよく見かけるが、こちらでは春一番に「天ぷら」として食卓に上がる場面が多い。テンプラのほか、味噌で煮たりする。ただし、食べるのは花が咲く前。

                


山葵(わさび)
わさびというのは自然に生えているように思うが、ほとんどは土地の人が楽しみにして育てているというものが多い。飛騨の春祭りには欠かせないもので、若い茎葉をサッと湯に通し、ビニール袋に入れて冷凍庫へ放り込むと辛みが増大する。ここに醤油をたらして味わう。僕はお茶漬けや刺身の添えに使ったりしてよく食べる。これがまた美味しい。手巻き寿司をやるときに大葉の代わりにしてもいける。

 

独活(うど)
うどは、独活の大木と言うくらい大きくなるが、天ぷらに適するのは、このくらいの大きさまでだろう。これよりも大きくなると、茎を酢の物にするくらいしかできない。平野でも良く見るが、特に山に生えているものは「山うど」として珍重される。色が濃くてちょっと小振り。苦みのある味が好まれる。

             

くぐみ(クサソテツ)
くぐみは、クサソテツの別名で、こごみとも言う。ぜんまいやわらびと違い、アクが強くなく、茹でてからしマヨネーズあえや天ぷらにしたり食べ方はいろいろ。



蕨(わらび)
わらびは比較的容易に発見できる山菜ではあるが、ぜんまい同様アクが強く、茹でただけでは食べにくい。
茹でた後、干して、ぜんまいのように使ったりするが、茹でこぼして水にさらしてアクを抜き、おひたしにしたり、みそ汁に入れて食べたりするのが一般的。

               

行者大蒜(ぎょうじゃにんにく)
ぎょうじゃにんにくは、野生で見かけることはほとんどなくなってしまった。いまでは栽培ものが多いが、うちのものは宮村のおじさんから分けてもらったもの。畑の隅っこに適当に植えてほかってある。自然に近い環境にしてある。これは、焼いて食べたり、すりおろして普通のにんにくのように薬味にしたり、いろいろ。

 

野蒜(のびる)
のびるというのは野生のネギ(あさつき)のことだが、うちのものは昔じいちゃんがどっかから持ってきたものらしい。ぎょうじゃにんにくと同じく、畑に適当に植わっている。ネギ科のものは丈夫なのか、本来野生でないニラも同じ様な状態でちゃんと毎年生えてくる。

土筆(つくし)
つくしは、飛騨の人は食べない。「あれは草だ」と言う。僕は平野の出なので、つくしこそ代表的な「食べられる野草」だと思っていたのに・・うちの皆はつくしを採っている人を見ると不思議がっている。もっとも、ここらには、タラの芽やわらび、ぜんまい、くぐみ、山うど、フキ、ミズナなど、美味しい山菜がたくさんあって、わざわざつくしなんか食べなくていいと思っているのかもしれない。つくしはふきのとうと同じように、つぼみのうちに食べる。
                     

筍(たけのこ)
たけのこというと、飛騨では姫たけのこ(ネマガリタケ)のことを指す。大きいタケノコは飛騨では生えない。たけのこ採りが好きな人は多く、やぶこぎしながら、迷子にならない様声を掛け合いながら、たけのこを採るのが一般的。最近では採ったたけのこは缶詰工場に持ち込み、缶詰に加工してもらう人が多い。我が家もそう。