メカばか講座 第6時限 「ホイール及びタイヤ」

ホイール
ホイールと言えば、自動車の世界では一般にステアリングホイール(ハンドルのことね)か、ロードホイールのことを指す。ここではロードホイールについてお話します。
ロードホイールとは、言うまでもなくタイヤがはまっているもののことですが、一般に見るのはディスクホイールとスポークホイールだろう。
ディスクホイールと言うのは、文字通り皿状のホイールのことであるが、乗用車など小型のものには、一体式のリムが、大型用のものにはリムが分解式で、サイドリングを外してタイヤを脱着するタイプが多い。
なんでサイドリングが外せるものでなければならないのか。
これはタイヤに秘密がある。一般的なタイヤが、リムにはまるビード部(一番内側の固いとこ)が比較的柔らかくて、タイヤを押せば容易に変形でき、リムにはめることが出来るのに対し、大型のタイヤは固くてとても変形させることができない。だから、片方を開放型にして脱着を容易にしているわけ。
このサイドリングというのもくせ者で、いいかげんに取り付けると空気を入れた時に外れて大事故になる可能性がある。事実、死亡事故もよく聞いたものだ。
まあ、普通の乗用車などでは、いまや溶接で組まれたホイールが殆どで(スチール製の場合)組立式リムのものは、昔の軽自動車などではよく見たが、最近はほとんどなくなった。
スチール製ホイール(いわゆるテッチンホイール)と切り離せないのは「ホイールキャップ」で、外見を見栄え良くするためにはめる場合が多い。
また、一時は、「アルミもどき」が流行った時代があり、スチールホイールの上に、樹脂などで造形を施したものがあった。現在ほとんど見ることはないが、よく騙される人がいた。しかし、ムチャクチャ重たいホイールで、燃費を重視する現在では考えられない製品だった。

スポークホイールは、自転車や二輪車では現在も多く使用されている。自動車用はほとんど絶滅状態と言ってよい。これもメンテナンスをできる人が少なくなったのと、軽量というメリットも軽合金ホイールの出現で弱くなったからだろう。綺麗なホイールなんだけどね。しかし二輪車の世界でも、特にオンロード車では少なくなりつつある。

最近の流行はやはり、アルミホイールに代表される「軽合金ホイール」だろう。軽合金ホイールは、軽いというメリットのほかに、デザインの自由度が高いとかがあり、事実スチールホイールより重い軽合金ホイールもある。
材質はアルミニウムを主体としたものが多く、マグネシウムを多く含むものは特に「マグネシウムホイール」と呼ばれる。製造法は、一般的な鋳造によるものと、鍛造によるものがある。機械的強度は鍛造品の方が当然高く、同じ強度とすればさらに軽量化ができるということになる。しかし、価格は当然高い。しかも、いいかげんな鍛造品よりは、よくできた鋳造品の方が良い場合もあり、一概に鋳造はダメだという決めつけは良くないと思う。組立式のものも多くて、ディスク部とリムで製造法が違うものもある。
つまり選び方とすれば、どのような選び方も出来るわけで、だからこそ慎重に選びたいもの。最近は大型車も軽合金ホイールのものが増えてきた。(特にバスなど)

ホイールを選ぶ時の基本的な事項
オフセット
オフセットと言うのは、ホイールの取り付け面(フランジ)がホイールの幅に対してどれだけずれているか、というもの。最近はFFベースの車が多く、+35mmから+45mmくらいのものが多い。FR用でもマイナスというのは少なくなった。ETと表示しているカタログもある。
PCD(ピッチサークルダイアメーター)
読んで字のごとし、ホイールボルト(ナット)の取り付け中心を円に見立てた時の直径。4穴の場合なら、対向するボルト取り付け間隔ということ。乗用車用では98mm、100mm、108mm、112mm、114.3mm、120mmなどがあり、メーカーが違うと互換性のないものが多い。最近は汎用品だとマルチと言って、数種のPCDの穴のあいたものも多い。ただし、あまり格好は良くない。また、PCDの違いを解消するためにPCDチェンジャー(変換アダプター)やスライドボルト(偏心軸ボルト)を使っている人も多い。(特に外車乗ってる人)まあそれも、外車はボルト式が多いから出来る芸当ではある。(国産車だと短いスタッドボルトを長いものに打ち変えないといけない)
最近はBCDと呼ぶ場合もあるが、ボルトピッチ(ボルト−ボルト間距離)と混同している話も聞くので、紛らわしい呼び方は統一した方がいいと思う。
ホイール径
最近は、インチアップとか言って、ノーマルサイズから径を大きくしている人も多い。ホイール径が大きいメリットとしては、ブレーキが大きいものを取り付け可能ということだろうが、ノーマル車でインチアップしたところで、実用上のメリットはタイヤの選択肢が増える程度で、一般にはファッションでインチアップしているのだと思う。
僕がインプレッサに乗っていた時は逆に、取り付くラリータイヤが無いため、16インチから15インチにインチダウンするオプションを付けたくらい。(ブレーキまで小さくなる)ホイール径が大きいイコール高性能車向けとは限らない。
JWL、JWL−T
軽合金製ディスクホイールの技術基準に適合することを示すマークである。軽合金ホイールを取り付けて国内の公道を走行しようとするときは、このマークがないと保安基準に適合しないことになっている。これは自動車検査業務等実施要領に明記してある。

タイヤ
昔、まだ僕が自動車の勉強を始めた頃、シャシの先生が「タイヤって何で黒いのか」と聞いた。たまたま僕は兄に以前聞いて知っていたので、「カーボンが混入されていて丈夫だからです」と答えた。先生は正解だと言った。ただ、先生は「丈夫というのは値段の割にということだよ」と付け加えた。
ただ、タイヤが黒いということにも理由がある。まあ、普通の人はそんなこと気にもしないけれど。
タイヤは自動車には欠かせないものだが、以外とタイヤに詳しい人というのは少ない。ラジアルタイヤといったって、何がラジアルで、何でそれがいいのかということは殆どの人は知らない。昔の人は運転免許に構造があったりしたので、結構詳しいが、最近の人にはプライ数の話をしても、「?」という顔をしている。これも、常時はタイヤの表面しか見てないからだろう。タイヤの性能にしても、ただ幅広や偏平ならいいように思われているが、シャシとのマッチングということを考えていない人も多い。軽量化と言ったって、インチアップするということは金属部分が増えるということで、マグネシウムなど使わない限り、重量的には重くなってしまうことが多い。足周りがノーマルなら、ノーマルサイズのタイヤを履くのが安全な気がする。タイヤというのは、誰でも分かるぐらい性能差が大きい。
レースの世界では、タイヤ専門のエンジニアがいたりしてすごいが、ホビーレーサーでもタイヤの色や減り方をよく見て、セッティング出しをしたりする。やはり速い人は色や減り方がきれいなことが多い。
タイヤというと、溝の深さしか気にしない人も多いが、以外とその構造は複雑になっているので、溝が残っていても性能が低下している場合もある。タイヤはこまめにチェックした方が安全。

タイヤの構造
トレッド部
トレッド部とは、タイヤが地面と接地する部分のこと。厚いゴムで作られていて、最近はコンパウンドの違う層状になっているものが多い。一般に溝が付いていて、滑り止めなどの目的に使われる。ウエアインジケーターと言う摩耗限度(スリップサイン)も付いている。なおスタッドレスタイヤなどの冬タイヤには、溝の50パーセントの高さのプラットフォームというものが付いている。これより摩耗すると道路交通法による冬タイヤとしては使用できない。(この部分は道路運送車両法ではない)
ショルダ部
肩に相当することからこう呼ばれる。溝が付いていたり、形状がトレッドと連続して丸い「ラウンドショルダー」と言うタイプもある。コーナリング時に特性の差が出やすい。
サイド部
サイドウォールの部分。自転車などはオープンサイドと言って内部が露出しているものも多いが、自動車用ではそのようなものは現在はないと言ってよい。ラリー用などはカット防止のためにガードが付いていたり、ホイールのリムをガードする目的で、リムプロテクタが付いているタイヤもある。
ビード部
タイヤがリムと接触する部分。円周方向にビードワイヤーが入っていて、タイヤが外れたり変形したりするのを防ぐ役目をする。
ブレーカ
トレッド部とカーカスの間にあり、路面からの衝撃を緩和したり釘などの貫通を防ぐ。スチール製のものもある。特にラジアルタイヤはカーカスが弱く、ブレーカが高強度となっている。
カーカス
タイヤを形作る部分で、空気圧に耐えて一定容積を保つ。コードの材質は昔は綿などが多かったが、現在はナイロンやレーヨンなどの合成素材が主流。ラジアルタイヤではスチールが多い。ラジアルタイヤと言うのは、このカーカスがラジアル(放射状)に配置されていることからこう呼ばれる。
タイヤの強さはこのコードの引っ張り強さとコードの層の数で決定される。これを数値化したのが、PR(プライレーティング)で、もともとは、綿のカーカスの1層分の強度が1PRとされていた。つまり、プライ数(層の数)とPRは同一だったのだが、現在はより高強度の素材になったため、「相当分の」という意味でPRと表現されている。だから、例えば4プライが4PRとは限らない。
ライナ
チューブ専用タイヤには無かったものだが、時代がチューブレスになると、空気漏れを防ぐ目的でライナが付くようになった。またビード部には、チェーファと言う特に密着を良くした部分が設けられた。ここは重要な部分で、傷が入ったり形状が悪いと、エア漏れの原因となる。もっとも、ホイール側も重要で、サビなどがあると密着が悪くなり、これもエア漏れの原因となる。
カーフ・サイピング
カーフとかサイピングと言うのは、タイヤトレッドの細かい溝のことだが、この溝を付ける過程の違いで呼び分けられると習った気がするが、現在はサイピング(サイプ)と呼ばれることが多いようだ。
偏平率
昔はローセクションハイトタイヤ(LSH)と呼ばれていたが、これもバイアスタイヤ主流の時代の話しで、現在はロープロファイルタイヤと呼ばれる場合がほとんど。偏平率も、60、55、50、45、40、35と、今や空気入りタイヤでは無くなるのではないかと思うくらい、偏平化が進んだ。しかし、乗り心地は偏平でないものの方が当然良い。
ノーパンクタイヤ、ムースタイヤ
かつて、ノーパンクタイヤと言うものがあった。タイヤ内部のライナが、特殊ゴムで出来ていて、釘などが刺さって抜けると、その穴に特殊ゴムが引き込まれて塞ぐというものだった。現在は廃れてしまった。
これに対し、90年代の中頃からムースタイヤと言うものが出てきた。もともとはラリーなどのダート競技で、バーストしても走行できるように(タイヤ交換しなくて良いように)したもので、空気圧が下がると内部に仕込まれたムース状の中子が膨らむ仕組みになっている。重量面では不利だが、ダート競技ではよく使用されている。
コンパウンド
コンパウンドというのは判りやすく言えばゴム質のこと。ゴムのレシピと言ってもいいだろう。タイヤ設計の中で最も秘密の部分でもある。タイヤはゴムで出来ているが、このごろは天然ゴムのみで出来たタイヤは存在しない。ベースは石油を元とした合成ゴムに先のカーボンや添加剤、最近ではシリカやグラスファイバー、クルミの殻、細かい繊維などとともに天然ゴムも混ぜ込み、ここに加硫(硫黄を混ぜ込む)して加圧するとゴムが固くなって形になる。タイヤというのは化学工業なんですね。
チューブ
チューブと言っても、最近はほとんどチューブレスタイヤで自動車タイヤのチューブを見たことがない人も多いだろう。チューブにはバルブが付いているが、チューブレスタイヤではバルブはホイールに付く。
フラップ
フラップもチューブレスタイヤには付かない。フラップはリムとチューブが当たって傷が付かないようにするもので、タイヤを組み込む前にホイールに取り付ける。

ロードインデックス
ロードインデックス(荷重指数)とは、そのタイヤ1本に負荷できる最大負荷能力を示すもの。
LI 負荷能力(kg) LI 負荷能力(kg) LI 負荷能力(kg) LI 負荷能力(kg) LI 負荷能力(kg)
60 250 72 355 84 500 96 710 108 1000
61 257 73 365 85 515 97 730 109 1030
62 265 74 375 86 530 98 750 110 1060
63 272 75 387 87 545 99 775 111 1090
64 280 76 400 88 560 100 800 112 1120
65 290 77 412 89 580 101 825 113 1150
66 300 78 425 90 600 102 850 114 1180
67 307 79 437 91 615 103 875 115 1215
68 315 80 450 92 630 104 900 116 1250
69 325 81 462 93 650 105 925 117 1285
70 335 82 475 94 670 106 950 118 1320
71 345 83 487 95 690 107 975 119 1360

速度記号

速度記号はそのタイヤが走行できる最高速度(km/h)を示す記号。
速度記号 最高速度 速度記号 最高速度 速度記号 最高速度
140 180 240超
150 190 270
160 210 300
170 240

バランス

ホイールバランスにはスタチック(静的)バランスと、ダイナミック(動的)バランスとがあり、いずれも現在は車両から取り外してバランスを取る、オフザカー式で行う場合が多い。

JATMA
JATMAというのは、日本自動車タイヤ協会のことで、ここでタイヤに関する規格を作成した。この規格をまとめたものが、「JATMA YEAR BOOK」である。ここには自動車用タイヤのサイズ、空気圧−荷重対応表、適用リム、接地幅、やなどの基準値が載っている。