メカばか講座 第2時限 「サスペンション及びアクスル」

はじめに
サスペンション・アクスルは、言うまでもなくフレーム・ボディ以外ではシャシで最も重要な部分だろう。それというのも、サス・アクスルが無ければ、ホイールアライメントが存在しない。
まあ、能書きはともかく、アクスルとサスペンションは切っても切り離せない存在。大きく分けると、車軸式と独立式に分けることができる。
車軸式は、
・平行リーフスプリング型
・横置きリーフスプリング型
・コイルスプリング型
・エアスプリング型
・ド・ディオン型
・マルチリンク・ビーム型
などがあり、独立式には、
・ウイッシュボーン型
・ストラット型
・トレーリングアーム(リンク)型
・リーディングアーム(リンク)型
・セミトレーリングアーム型
・ダイアゴナルリンク型
・スイングアクスル型
・マルチリンク型
などがある。

車軸式(リジッドアクスル)
車軸式は、左右のホイールが1本の車軸(アクスル)で連結され、アクスルに取り付けられたスプリングを介してフレームに取り付けられている構造を言う。
特徴としては、構造が簡単で、強度が大きく、キャンバ変化がないことが挙げられ、特に大型車に多く採用されている。
スプリングは、リーフスプリング、コイルスプリング、エアスプリングなどが使われる場合がほとんどで、リーフスプリングは平行に配置したり横置きとしたりする場合がある。リーフも殆どは多板半楕円リーフだが、単板のものや、1/4楕円リーフ、楕円リーフのものもあった。
ド・ディオン型は、車軸式でありながら、デフやドライブシャフトがアクスルと一体ではないもの。アクスルをド・ディオンチューブと言う場合もある。
マルチリンクビームは最近現れたもので、アームの取り付けをルーズにして、サイドスラストがかかったりするような場合にラテラルリンクを軸にトー変化などを付けてやろうという疑似4WSの働きを持つ、ただの車軸式のようでちょっと違うもの。また、マルチリンクビームではないが、厳密に言えば車軸式ではなく車軸が二重構造になっている形のものもある。これも若干のトー、キャンバ変化を持たせることができる。
これらのものは、進化した車軸式あるいは独立式との中間と言えるのかも知れない。

ド・ディオン(ド・ディオンチューブ) ド・ディオン(デフ、ドライブシャフト、トレーリングリンク、スタビライザ)

独立式(デバィデッドアクスルあるいはインディペンデント・サス)
独立式も各種あり、メーカーの好みがあるようだが、ウイッシュボーン型がかつては多かった。ウイッシュボーンと言うのは「鎖骨」のことで、鎖骨に似た形状をしたアームを持つことから、この名がある。ダブルウィッシュボーンは上下で2個のアームを持つもの。
ストラット型は、構造が簡単で軽量なことから、近年多く採用されている。ストラットとは「支柱」のことで、その真下にボールジョイントがあり、そことサスペンションアームが連結されている。アームはIアームやAアーム、あるいは、パラレルリンクの場合もある。Iアームの場合はストラットバーが付くか、太いスタビライザまたはトレーリングリンクが付く場合が多い。

デルタのフロントストラット(Iアーム+ストラットバー、スタビライザ付き) デルタのリヤパラレルストラット(トレーリングリンク、スタビライザ付き)

トレリングアーム型は、小型のFF車によく使用されるが、最近は少なくなった。トレッドやキャンバ変化がないのが特徴だが、横剛性は低い。これを逆にしたものがリーディングリンクだが、現在はほとんど使用されていない。
セミトレーリングアームは、一時期、国産のIRS(後輪独立懸架)車で流行った。ポルシェやBMWなど、ドイツ車にも例が多かった。ダイアゴナルリンクを含めトレーリングアーム型とスイングアクスル型の中間的な特性を持つが、トレッド、トー角度の変化が現れるのは共通している。
これらの対策として誕生したのが、マルチリンク型と言ってよい。マルチと言うだけあり、3本以上のアーム(リンク)およびスタビライザでホイールの動き方をがんじがらめに規制するというもの。ダブルウィッシュボーンにも似ているところがある。一時は流行したが、構造の複雑さや重量面、故障時の修復の困難度などにより、車の性格により、他の形式と使い分けが進んだようだ。

なお、近年では燃費をはじめ、環境対策のため、軽量化が重視されるようになった。このため、部材も軽合金製のものや、FRP製のものも採用されている。

ニッサンセレナのリヤに採用された、横置きリーフスプリングのマルチリンク
プジョー306フロントのAアーム+スタビライザという最近の一般的な形
プジョー306リヤに採用されたトレーリングアーム、トーションバースプリング、非常にシンプルな構成

いずれにしても、サスペンションは、ホイールの位置決めをするという、重要な役割を持っている。このため、走行特性、旋回特性、走破性に与える影響は多大で、シャシの花形とも言える。走行性能については、別のところで。

アクスル
アクスルと言っても、独立式の場合はそれぞれの部品の説明で事足りるので、ここでは、車軸式のリアアクスルについて説明する。
車軸式のリヤアクスルにおいては、ド・ディオン型を除いてアクスルシャフトがアクスルハウジングの中に収納されている。
このため、トラブルも発生しにくい。型式は、全浮動式、半浮動式、3/4浮動式がある。一般に乗用車などの小型車には半浮動式が、荷重の大きい大型トラックや建設機械などは全浮動式が使われる。3/4浮動式は、大型乗用車や小型トラックに使用されたが、最近は少なくなってきている。
全浮動式では、車検の時はシャフトを引き抜き(タイヤ・ホイールはそのまま)点検して、シャフトシールだけ交換という場合が多い。(まあ、ブレーキドラムを外すので、いずれにしても、ホイールは外すのだが)
フロントアクスルで車軸式の場合は、状況が少し違う。前輪は操舵するためキングピンがあり、4駆の場合は、リヤのように、アクスルの中にシャフトが通っている。