メカばか講座 第7時限 「フレーム、ボディ」

はじめに
自動車において、シャシが重要なのは当たり前だが、あまりシャシについて取り上げられている本は多くない。確かに、シャシの性能をうんぬんするより、エンジンの出力を書いた方が分かりやすい。
しかし、レースでタイトルが掛かるのはシャシメーカーだと言うように、本当に速い車は何処に差があるかというと、やはりシャシに差が出ている。エンジンは本来シャシに合わせて作るものだ。なぜなら、エンジンが走る訳ではないから。シャシが走るのだから。エンジンを作っているメーカーはあくまでサプライヤーだ。
何を言いたいかというと、「エンジンからスタートした、あるいはエンジンが飛び抜けた車はまず成功しない」ということ。市販車ベースのレースの世界でも、まずやるのは足周り。エンジンから始めるのはとんでもないこと。シャシの性能がエンジンより劣っていた場合、即座に事故に直結する。

シャシも、現在はほとんどモノコックで、フレーム構造というのは乗用車ではほとんど見られなくなった。これも、トラックならいざしらず、乗用車ではその高速化とあいまって、昔よく見られた平面的なラダーフレームなどでは剛性確保や軽量化が難しいからだろう。そういう意味では、フレームを使用しているから高級車というのは間違っている。高級車なら安全・高剛性を第一に考えるものではないのかね。ボディで高剛性を確保と言うのならフレームを採用する意味はあまりない。だいたいフレームを使った高級車と言ってもペリメーターフレームが多くて、これならモノコックからプラットフォームを分離しただけとそんなに変わらない。しかしそこまでしてフレームの存在を主張したいものなのかな。
フレームでも鋼管のバードケージタイプはレース用などでよく使われるし、ワンオフで作られるダートラやジムカーナ用マシンなどは、ほとんどが鋼管スペースフレームか、溶接アルミモノコック。最近のレーシングカーはカーボンモノコックも多いね。鋼板モノコックは大型のプレス機などを必要とするので、大メーカーで大量生産でないと使用しない。

シャシの話をするときに重要なのは、数値で表現しにくいものが多いということ。エンジンだと、パワーがどうとか、トルクがどうとか分かりやすいが、シャシ性能は単純には説明できない。だからこそシャシが重要なのだろう。
まず、動きが3次元であること。XYZのモーメントとスリップアングル、さらに重力加速度と慣性、加重移動などが複雑にからみ、非常に分かりにくい。そして、運転する人によりその好みが違うという事実。一筋縄では優劣の判定はできない。また状況や用途に応じて特性を換えたりするという幅の広さ・・
こんな話を始めると収拾がつかなくなってしまいそう。これらの話は別のところでやりましょう。

シャシについて
シャシとフレームを混同している人も多いのでまず説明しておくと、シャシというのは、ボディ以外のものを言う。昔は自動車というものは、シャシを作ってからボディを架装していた。トラックなどは今でもそうだね。それで、トラックなどは仮のナンバーを付けて運搬しているのを見た人もいるだろうけど、シャシだけでも自走できるわけだ。ホントはね。
シャシ、本来はエンジンも含めてシャシなんだが、最近はエンジンは別格で扱うことが多い。ここでもエンジンは別に扱っているが、基本は忘れないでほしい。
シャシの構成を書いてみる。
1.動力発生装置
 言わずと知れたエンジンなどのこと。ガソリンエンジンやディーゼルエンジン、電動機や昔なら蒸気機関も用いた。
2.動力伝達装置
 判りやすく言うとクラッチ、ミッション、デフ、などのこと。このような構成のものが多いが、違う構成のものもある。変わったものの例としては、チェーンドライブや油圧モータードライブなんかがあるね。
3.舵取り装置
 普通の自動車では前輪で舵をとるが、フォークリフトなど、後輪操舵のものもある。最近は4WSもあるが、特殊な車では4WSどころか、6WS、8WSなどもある。
4.制動装置
 ブレーキのことだが、自動車によってはブレーキ装置のない自動車も存在し、事実僕は見たことがある。
5.懸架装置
 一般にサスと言うもの。フレーム又はボディとアクスルの間に存在する。
6.走行装置
 シャシから、上の1から5を除いたもの。フレームやタイヤホイールなどが該当する。
7.その他
 以上のもの以外で安全対策などに関するすべてのもの。計器類、灯火、警音器などが含まれる。

フレームの役目と構造
シャシが理解できたところで、フレームの話し。フレームのことを「シャシ・フレーム」と表現したりするが、フレームというのは、すべてにおいての基本というわけだ。シャシでも、部品にばかり目が行きがちではあるが、実は走行に関する性能はフレームに起因するものが非常に多い。部品側はあくまで「調整」するもので、ベースはフレームが受け持っている。フレームの性能というのは、機械が簡単になればなるほど、あるいは限界まで能力を追求した時、顕著に現れる。部品で調整できない根本的な部分であるからこそ難しく、重要なものなんです。
H型フレーム
トラックなどで今でも多く使われるH型フレーム。サイドメンバとクロスメンバから成り、構成が簡単で製作が容易。曲げに強いとされている。
X型フレーム
乗用車に比較的多い。H型フレームを中央で絞ってみたものと、クロスメンバをX字にしたものとがある。ねじりに強いとされている。
ペリメーターフレーム
ペリメーターフレームはH型フレームの亜種と言ってよく、ボディの室内空間を広げるため、あるいは重心を下げるためなどにサイドメンバをホイールベースの内側だけ拡げたもの。
バックボーンフレーム
1本の太い鋼管または箱状の背骨にブラケットなどを取り付けたもの。サイドメンバがないので、重心や車高を下げるのに有利。ロータスの車で有名。
プラットフォームフレーム
フレームとボディ床面を一体で作ったもので、ボディと組み合わせて大きな断面を形成し剛性を出している。シトロエンのDSなんかもこれに該当するのかな。プラツトフォームは、モノコックへの過渡的なフレームと言われ、モノコックで言うフロアパネルもプラットフォームという表現をする場合がある。
トラスフレーム
スペースフレームとも言われ、鋼管を組み合わせ溶接してトラス状にした、立体的なフレーム。重量が軽く、剛性も高くできるが、大量生産には向かない。競技用によく使われている。
モノコック
フレームにボディを架装するという考えでなく、ボディそのものを頑丈にしてフレームを省略しようとしたもの。全体で軽量化するのと、床面を下げるのに有効な型式。サスペンションやエンジン部分にはサブフレームを使用する場合が多いため、ユニット・コンストラクション・ボディと言う場合もある。ラリーなどで、ごっそりユニットで部品交換する光景を見た人もいるでしょう。大量生産の市販乗用車はだいたいこの形。

ボディの種類
車検証の自動車の形状というのは、あまり気にする人がいないが、車検証で見ると、クーペもセダンも、ハードトップも全部「箱形」と書いてある。面白いね。しかし、今やボディの形状はいろいろな呼び方で言うため、どの区分に入るか判別するのが難しくなってきている。
クーペ
もともとは2座席の4輪馬車のことだが、自動車では屋根が短い2ドア車のことを指す。最近はハッチバック式のものも多い。
ハードトップ
もともとは、固い屋根と言う意味で、オープンカーの幌式のものをソフトトップと言うのに対し、耐久性の高い固い屋根のものを言う。それが固定化されボディ一体のものもハードトップと言う。もともとはセンターピラーが無かったが、最近はセンターピラーのあるもので窓枠の無いものもハードトップと言っている。2ドアと4ドアが多い。
セダン
普通、2列の席を備えた箱形の乗用車。窓枠の付いた4ドアまたは2ドアを備える。セダン形状のものを3ボックスカーと言うが、これはエンジンルーム、乗車室、トランクルームを3個の箱に見立てた言い方。
最近はセダンと言うと野暮ったく思うのか、サルーンと言ったりもする。
ステーションワゴン
もともとはセダンの変形で、車室を長くし、後ろに貨物室を設け、リヤゲートを付けたもの。現在はキャブオーバー(運転席の下にエンジンがある)の1ボックス車もステーションワゴンと言っている。
2ボックス
3ボックス(セダン)に対し、トランクを切り落としたような形状の自動車。最近の小型車に多い。リヤゲートを設けたハッチバックが主流だが、リヤゲートを持たないものもある。
リムジン
後ろに乗る人を重視して作られた、2列以上の席を設けた乗用車。運転席と仕切られているものを言う。