メカばか講座 第11時限 「環境対策」

はじめに
環境対策という話はいまに始まったわけでなく、人間が人間の暮らしを始めた頃からすでに環境破壊というものが始まっていたという話しもある。特に最近環境問題が言われるのは、人間という生き物が自然界に適応せず自然の改変を行い、現実問題として自らの首を絞めるような状況になってしまったからだろう。これはとてつもなく大きな話だが、それゆえ重く真剣に考えなければならない問題でもある。少なくとも、僕らが育った子供時代の環境に戻さないと自分の子供に申し訳ない。
僕は特別都会の生活が好きでもないし、逆に自然に囲まれた、できるだけ自然に逆らわない暮らしがしたいと思っている。楽な暮らしさえ望まなければ、十分昔に戻せると思うのだが・・


自動車の環境対策
自動車の環境対策は従来自動車排出ガスと騒音対策に集約されてきた。これは間違いでは無かった。日本の排出ガス対策行政は正しかったのだと言える。ただし唯一予測と違ったとすれば、ここまで自動車台数が増えるとは、道路運送車両法制定の昭和20年代では考えられなかっただろう。そしてひとつの失策としては、自動車税の緩和が挙げられるのだろう。
昔は大排気量の自動車の税金はとてつもなく高かった。アメ車の7リットルも排気量がある車は14万8500円も税金が掛かっていたのだ。3リットル以下でも8万1500円だった。今なら5万ほど。つまり、日本ではバブルの波とともに自動車の大型化が進んだが景気が悪くなってももどる気配は少ない。大きい車に馴らされてしまったのだ。自動車が大きくなれば取り廻しも苦しくなり(道路はあまり広くなったわけでもない)渋滞も増える。こうして排ガス総量としては増加傾向だ。そこへ持ってきて例のグリーン税制。
ここまでくると目もあてられない。グリーン税制というのは、はっきり言って大排気量車優遇税制である。
つまり排気量が大きくなるほど基準が緩く設定されている。こんなやり方では環境対策などポーズとしか考えられない。
公害対策基本法、大気汚染防止法、騒音規制法に加え、エネルギー使用の合理化に関する法律など、規制は厳しくなったように見えるが、個々の車に対しては有効でも総量として抑止力があるかといえば疑問だ。
てっとり早いのは、便利な暮らしはやめてしまえば良い。通販も今日頼んで明日に来なくてもいい。今の物流事情というのは、常にトラックで小口に荷物を運搬し在庫持たずに倉庫費を低減、つまり、道路を「走る倉庫」にしているだけだ。
これでは渋滞が無くなるわけがない。
自動車製造業界のみならず、流通業界、その他一般の人も含めよく考えてほしい。

排ガス対策
排ガス対策はかつて日本の得意分野だったはずだ。マスキー法に始まる排ガス規制はかなり強引に導入されたものの、メーカーも生き残るために必死で排ガス対策を考えた。その結果エンジンマネジメントシステムは画期的な成長を遂げ、一時は高出力化に走った。ところがここに地球温暖化という問題とCo2規制、とりわけ京都議定書の問題が発生した。
ここでの対応がヨーロッパとアメリカ、日本、南洋諸国で大きく分かれた。
アメリカは早々に離脱を宣言し、南洋諸国は国の存亡に繋がる大問題の意識を持っている。ヨーロッパはがんばってやる気になっているが、日本は京都議定書の議長国という手前脱落することも出来ず、かと言って達成出来る目途も立っていないという状況。そこへ持ってきて大排気量優遇と省エネも進まない、火力発電も原子力、水力がダメで無くせない、と八方ふさがり状態。
自動車も一時は直噴エンジンが流行ったもののNoxがクリアできず足踏み、景気も悪くて開発意欲も低下という悪循環。
このままでは見通しは暗い。少なくともメーカーと役所が危機感を持って、かつての排ガス規制の時みたいに取り組まなければ、あるいはユーザーが真面目に考えなければならない問題だ。
CO2問題は、いまや重箱のすみを突っつくように、削減量を細かく拾っている。外国に対して「これだけがんばっているんだ」というところをアピールしたいのだろう。全ての業種について異常なほど細かく追求している。たとえば自動車1台作るのに昔と比べて製造工程や時間が削減されたから、その分CO2排出は減っているという計算や、牛のげっぷの数まで計算するようなところまで来ている。とにかく証拠を集めたいという意識がありありと見える。
しかし今は景気悪いからCO2発生量も減っているのだろう。
自動車の排ガス対策はエンジンの改良や触媒マフラーの発展により画期的に進展し、パワーと低公害の両立を実現したものも増えている。しかし、Noxの低減が難しいのは現在も変わりなく、高効率を目指すと排出量が増すというジレンマがある。メーカーも役所からエンジン効率を下げろと言われて反発したという話しもある。
ここまでくると「高性能」の定義自体が変わったのだと実感させられる。

騒音対策
騒音対策は近年マフラーの構造基準が緩和されたものの、とにかく音が基準値を下回ればならないという現実に合った対策がとられた。ある意味パーシャルな部分で規制緩和されたような感じになっているが、逆にオートバイには厳しくなったような感じで集合マフラーも少なくなりつつある。2サイクルも絶滅に近い。

フロン対策
フロンの話題もCO2に比べれば下火になったが、これも業界指導が進み回収体制が進んだからだろう。しかし現在もエアコンに使用されているHFC134aは温暖化係数で言えばCO2の何十倍という強烈なものであり、厳しい管理下に置かなければならなくなっている。

粉塵対策
以前はスパイクタイヤというものがあり、それによる粉塵が社会問題となった。このため日本は早い段階でスパイクタイヤの使用を禁止し、世界的にも評価されている。これに伴いスタッドレスタイヤの技術革新が進んだともいえるだろう。
スタッドレスタイヤでは日本は最先端であると言ってもよいくらいだ。神岡政夫選手がRACラリーで2位に入賞したとき、外国のタイヤメーカーが「魔法のタイヤ」をこぞって偵察に来たという話しは有名である。