「イタ車談義」その10

イタ車の「イタ車らしい」ところって、なんだろう。これを語り出すととどまるところを知らないが、昔、職場の人と話していて、「あの独特の匂いだよね」という話になったことがある。
そう、イタ車は目隠しして乗り込んでも、すぐわかる「匂い」がする。日本車で同じ匂いがするものもあるが、大抵それは、1980年以前の車だろう。それにしても国産風の匂いであって、考えればその違いが解ると思う。
その匂い、実は「感覚的な」ものではないんですよ。本当の匂い(香り)なんです。それがどんな匂いかと言うと、油のような甘いような匂いなんです。車によっては、ガソリン臭い匂いが混じる場合もある。(うちのデルタだ)
でもその油の匂いは普通の油の匂いでない。ずーっと何の油の匂いだろうと思っていたが、最近思い出した。
そう、イタリアの自転車に乗っている人なら解るが、あの「カンパニョーロのグリス」の匂いに近い。これがどういう匂いか理解しにくいなら、革製品に塗る「ミンクオイル」に近い匂いだと言えば解りやすいかもしれない。
しかし、イタ車すべてが革シートではないのに、なぜミンクオイルの匂いなのか。やはり「グリス」の匂いと考えるのが正しいように思う。まあグリスだけでなく、エンジンオイルやミッションオイルの匂いも混じっているだろうけど。
これもきっと「国民性」というのもあるのだろう。日本車で、こんな油臭い車を売っていたら、おそらく売れない。なんと言っても、抗菌グッズや無臭が好きな日本人がとっても多いのは事実だし。「臭いものにフタ」という考えが昔から日本にはあって、臭いものはアウトローのように扱われてきたのだろう。しかし、そういういやなものから眼をそむけてばかりでは、物事の全体像というものは捉えられない。絶世の美女だって、おならくらいするだろうに、大半の人はそれを信じないというのと似ている。ある時それに気づき愕然とするか、最初から知っていれば親しみも増すだろうに。そう、イタ車は、そんな何事についても隠し事をしない、正直な明るさを持っている。
100点満点はつまらない。後は墜ちていくだけだから。それよりも、少しくらい欠点があっても希望がもてるポテンシャルを持ったものに惹かれる、というのは正しい選択ではないのかな。

「イタ車談義」その9
僕の車の乗り方について。
もう、何台も車を乗り継いできて、少なくともマイカーで「車が壊れて走れなくなった」という経験がない。おまけに、他人が、「この車調子悪くてエンジンがかからないんだ」と言っても、僕が乗ってみると即掛かって、調子もそれほど悪くないという事がよくあった。「エンジンかかったら寿司おごりだ」と言われ、すぐ掛けてみせて、まんまと寿司をおごってもらった事もある。
皆には不思議がられた。
エンジンをかけるにはコツがある。調子よくエンジンを使うのもコツがある。
そのコツとは、「車を甘やかせないこと、しかし無理させずに乗ること」
以前にも書いたことだが、僕はこの乗り方で、今までエンジントラブルというものに逢ったことがない。
しかし、以前、整備士をしていた頃は、エンジン不調の車は日常茶飯事だった。
車、特にエンジンは生き物と同じで、育て方(乗り方)でどうにでも変わる。よく聞く「この車は前のオーナーが良かったから良くエンジンが廻る」というやつだ。
ただ、大事に乗るという訳ではない。僕は冬以外は暖気運転もほとんどしないし、エンジンもきっちり廻す。ここで、僕の朝の行動を書いてみます。
1.運転席に座る
2.キーを差し、(ここからが違うよ)ONまで廻す
3.「ジー」という燃料ポンプの音を確認する
4.チャージランプ、燃料計、電圧計をパッパッと見る
5.アクセルを全閉からほんの少し踏み、セルを廻す
6.「キュキュ」と2回ほどでポンと掛かる(ばかみたいにアクセルは煽らない)
7.アクセル固定で、15秒ほど回し、チャージランプ消灯、油圧、電圧をチェックする
8.サイドブレーキを下ろし、発進する
9.水温が上がり油圧が落ち着くまで、3000回転以下で抑える
たったこれだけのことで、エンジンは常に快調になるはずです。
要するに、エンジンの状態をよく把握し、冷間時は無駄に踏まないということ。
ただ、エンジンが掛かりにくい場合はあって、その場合は軽くサッと踏むと掛かる時と軽く踏んだ状態からサッと離すと掛かる場合があり、クランキングのタイミングと瞬間的な判断で操作する。キャブの車の時は注意する。キャブによってはアクセル操作が違う。
ウェーバーなど空でアクセル踏んだりすると、かぶってしまって掛からなくなる。
炎天下などで掛からない時は、アクセル全開でセルを廻し、アクセルをポンと離すとだいたい掛かる。
つまり、「いい圧縮、いい火花、いい混合気」がエンジンが掛かる条件なので、この状態に整えるわけです。

イタ車に関わらず車に乗るコツ。それは、車の状態を常に把握すること。


「イタ車談議」その8
イタ車と言えば、我が家ではランチアであることは以前しました。では、イタ車は誰でも乗れるものなのか?

その問いに対し、僕は「日本車でないということが理解出来る事と定期整備をきちんとすれば乗れる」と答えることにしている。車であるのだから、ハンドルがあり、アクセルがあり、ブレーキがあり、クラッチがあり、ワイパーがありという事は基本的に同じ。もっとも「道路運送車両法」という日本国内で共通の法律の下で走るものなのだから、変わっているという事自体がありえない。違法改造なら別だが。

「左ハンドルじゃないか」と言う人がいたとしても、「トヨタ、ホンダ、日産、スバル、三菱だって、外国では左ハンドルだよ」と回答している。だいたい、道路運送車両法には「日本国内では右ハンドルで無ければならない」なんてどこにも書いてない。右ハンドルは、道路が左側通行だから右ハンドルの方がすれ違いが楽だろう、とか、左側通行の国はだいたい右ハンドルだから同じでいいやろ、といった程度のことだと思うよ。

「しかし、イタ車は壊れるだろう」という問いに対しては、少なくとも僕の周りでイタ車に乗っている数名の話では「思っていたより壊れない」という意見が多かった。逆に「ドイツ車の方が、電気系などすぐ壊れる気がする」という話も・・

そうなると、結果的に「イタ車は誰でも乗れる」という結論になる。ただ、冒頭の事を理解したとしての話だが。

つまり、イタリアで乗るように本来作られた車なので、「イタリア国内での常識」が残っているからだ。正規輸入車や日本仕様の車であれば、比較的その傾向は薄いと思うが、全くないという訳ではない。かと言って、構えて乗る必要もない。イタ車というのは、その国の人と同じく、ひとなつっこい。

イタ車に乗ること。それは、イタリアのお国柄を知るひとつの方法だと思う。


「イタ車談議」その7
ランチアデルタが我が家にやってきてまもなく1年になろうとしている。

この1年は、これといった重大な故障もなく、期待はずれといった感じだった。以外に丈夫なものだというのが実感。もっとも、車を甘やかさず、毎日通勤で使用していたからかも知れない。

さらに、イタ車だからというか、「ランチアデルタ」だからというか、日本車離れの運転感覚を、この1年で覚えた様に思う。たっぷりとしたサスストローク、クイックだが安定したコーナリング、小さいロール、分かりやすい旋回中心、思ったより効くトルセンデフ、破綻しないリヤまわり、効くのは遅いどっかんターボ、右コーナーに強い左ハンドル、以外に丈夫なサブフレーム、感動ものの高速安定性、などなど。

これだけ「普通に走らせて面白い」車というのは、国産ではちょっと覚えがない。強いてあげればスズキジムニーかホンダシティターボくらいか。こんな車を作るイタリアという国はあなどれない。もう商売は関係なしという感じ、以前このコーナーでも書いたが、完璧主義、もうこれなら文句ないだろという主張が見えるセッティング。そしてその根底にあるのは「遊び心」だと思う。

真剣に遊ぶ。これって重要なことだと思いませんか。


「イタ車談議」その6
ランチアデルタは、6月だというのに「冬用ワイパーブレード」を付けている。

これというのも、4月に発注した「ワイパーアーム」がなかなか届かなかったためで、通信販売で頼んだ時は「1ヶ月くらいで入りますよ」と言われたのに、結局届いたのは6月の10日過ぎで、2ヶ月半もかかってしまった。

まあ、こんな話は「イタ車乗り」なら別にどうということはないが、普通に国産車を乗ってる人には我慢が出来ないだろう。しかし、ここで僕が言いたかった事は少し違う。

つまり、「車の整備に対してどう考えるか」ということだ。

だいたいのイタ車乗りなら、「予防整備」に心がけているはずで、車検やオイル交換などでも、「部品持ち込み」でやる人が居るということ。これは、あらかじめ自分の車のコンディションを把握しておくという意味で、本来車に乗っている人なら「やらなければならない」事でもある。

しかし、今の大方の人は、エンジンルームを見たこともないという人がほとんどだろう。TVのガソリンスタンドのコマーシャルでも、「全国で○千人の国家整備士があなたの車を点検」などと言っていたが、あれはいいんだろうか。自動車は、「使用者が運行前に1日1回やらなければならない」ことになっている。あんなコマーシャルが流れるとは世も末だ。自動車使用者は考えを改めた方がよい。かつて「サザエさんのマイカー点検教室」の講師をやったこともあるが、そのような教育の場を増やす方が正しいと僕は思う。だって、自分の車でしょ。整備責任は自分にあるんだよ。

特にこれからは規制緩和で、最近の例では6ヶ月点検の義務づけがなくなったが、あれは「使用者責任」の拡大と言われている。つまり、整備するもしないも自分で判断して下さい、というわけだ。かつての護送船団方式が解消されつつある。役所はリストラの関係もあり、これからはどんどんそういう方向へ向かって行くのは間違いない。

そういう面からすると、「イタ車乗り」というのは時代の流れに合致している。