ツアイスレンズを知るための用語集
ここではツアイスレンズを知るために必要な用語の意味などを解説します。(随時追加していきます)
レンズ(Lenses) | 物質を収束させたり発散させたりするもの。光の場合は光学レンズ、 空気振動の場合は音響レンズなどと言われる。 |
メニスカスレンズ | 新月(三日月)状の形をしたレンズ |
単レンズ | 1800年代の前半、最も初期のカメラに使われたレンズ。1枚のもの または2枚のレンズを貼り合わせて1枚にしたものがある。 |
対称型レンズ (ガウスタイプ) |
レンズ開発の歴史上、単レンズの次に開発された。初期のものはメ ニスカスレンズを対称型に配置したものが多く、その後貼り合わせ メニスカスレンズ+メニスカスレンズのいわゆるダブルガウス型とい うように進化した。プラナーやビオゴンなどがこのタイプ。 |
トリプレットレンズ | 1800年代の終わりになると非対称型のトリプレットレンズが登場した。 凸凹凸の3枚のレンズを配置することによりトータルで凸レンズの効果 を与えたものだった。 その後、後ろの凸レンズを貼り合わせレンズにしたものがテッサータ イプと言われるレンズである。このタイプはダブルガウス型が8面空気 接触面を持つのに対し、6面しか空気に接触していない。このことから 反射防止コーティングの無かった時代では光の透過率が良く、コント ラストの高い画像を得ることが出来た。 さらに前の凸レンズを貼り合わせレンズにしたものがフォクトレンダー のヘリヤーやコダックのエクターであり、真ん中の凹レンズを貼り合わ せレンズにしたものがツアイスのゾナーである。 |
望遠レンズ | 望遠レンズは標準レンズより焦点距離が長いレンズであるが、一番後 ろのレンズエレメントからフィルム面の距離が長くなってしまうことにな る。これでは例えば焦点距離1000mmの望遠レンズがあったとすると レンズの長さは1m+αの長さになり、とても取り回しの悪いレンズとな る。レンズの全長を短く抑えるためには、普通レンズ内にある、焦点距 離の起点となる点(後側主点または節点と言う)がレンズ前方に(極端 な話しレンズ前方の仮想空間でも良い)来るような設計にすれば最後 部のレンズエレメントからフィルム間の距離を短くすることが出来る。 およそ標準レンズの2倍以上の焦点距離である単焦点レンズはこのよ うな設計が多くなっている。テレテッサーがこのタイプ。 |
レトロフォーカス型レンズ (逆望遠レンズ) |
通常の広角レンズをカメラに取り付けた時には、焦点距離が短くなる。 例えば15mmの焦点距離だとすると、フィルム面から15mmのところは すでにレンズの中という状態になる。この空間に何もないレンジファイ ンダーカメラであれば問題はないが、一眼レフの場合はミラーを置かな ければならないことから、ミラーアップして装着するとかになり非常に使 いづらいものとなる。主点をレンズの後方に追いやり、レンズを前に押し 出すためには望遠レンズの手法を使って、つまり望遠レンズを逆さにし たような設計にすれば、問題は解決される。 ツアイスではディスタゴンがこのタイプ。 |
反射式望遠レンズ | 通常のレンズは凹凸のガラスレンズで光を屈折させてフィルム面に画 像を結ぶが、反射式は凹面鏡やプリズムで光を集めて画面を作る。 中心に反射鏡があることから、ボケは環状のものが現れるという特徴が ある。ツアイスではミロターがこのタイプ。 |
色収差(Chromatic Aberration) | レンズを通った光は色により波長が違うことから屈折率が違い、同一平 面上に焦点を結ばない。このため色滲みとして現れる。 このため屈折率の違うガラスを組み合わせたり、張り合わせレンズとす ることにより補正したものが「色消レンズ」と呼ばれた。青色と黄色の2 色について補正したものを「アクロマート」と言い、赤色を加えて3波長の 補正を行ったものを「アポクロマート」と言う。なおアポクロマートは赤色の 波長を補正することから、距離計に赤外線補正指標を持たない。 なおツアイスには4色の補正をするという「スーパーアクロマート」というレ ンズもある。 |
球面収差(Spherical Aberration) | レンズが球体の一部を使用した形を持つことによる収差。屈折率の違い から一点に光が集まらず前後方向にずれ、像はぼけてしまう。大口径の 曲率の大きいレンズでは特に強く現れる。絞り込むことで改善されるが、 焦点移動を起こすので、実絞りで確認することが重要となる。 なお、非対称型レンズでよく発生し、対称型レンズでは発生は少ないと 言われている。 |
非点収差(Astigmatism) | 点が点として表現されない収差で、光軸に対して同心円の像と放射状の 像に分かれてしまうことから像流れとして発生する。 |
コマ収差(Coma) | 斜めから入った光が像面の1点に集まらず、彗星(コメート)のような形の ボケとして現れることからこの名がある。絞り込むことにより若干の効果 がある。対称型レンズによく出るらしい。 |
歪曲収差(Distortion) | 平面が平面として表現されない収差で、樽型、糸巻き型、陣笠型などが ある。いわゆるディストーション。 |
像面彎曲(Curvature of field) | 焦点面が平面に結像しないことから発生する収差。中心にピントを合わ せても周辺がぼけたり、周辺に合わせると真ん中が合わない。 |
フローティング機構 (近距離収差補正機構) |
近距離撮影時に像面彎曲や球面収差の補正を行う装置。広角レンズや 大口径レンズによく採用され、広角レンズでは主に像面彎曲が、望遠系 の大口径レンズでは主に球面収差の補正のために使用される。フォーカ スリングに連動するものや、補正リングが別に装備されているレンズもある。 |
フリントガラス | 鉛を含むガラス。屈折率が大きい。アッベ数(逆分散率)が50以下のもの。 |
クラウンガラス | 鉛を含まず、アルカリ土類金属を含むガラス。フリントガラスに比べて屈折 率が小さい。アッベ数が55以上のもの。 |
バリウムガラス | 光の波長により屈折率が変わる分散の程度が小さく、しかも高屈折率を 特徴とするガラス。アッベとショットにより開発された。 |
T*コーティング | フレアやゴーストなどの乱反射を少なくする目的で、レンズ表面に弗化マ グネシウムなどの物質を真空蒸着して薄い膜を作ったもの。いろいろな屈 折率を持たせたコーティングを多層膜としたものが1972年以降T*と呼ばれ るようになった。1972年以前のものはTと表示される。なお、プリズム双眼 鏡などのプリズムに施されるものはP*と表示される。また、ローライでライ センス生産されるものはHFTコーティングが施される。 なお、コーティングの色はレンズ自体の色再現性を補正する目的もあり、 高屈折レンズを採用するものは成分上青色を吸収することから、発色が黄 色っぽくなるのを防ぐため、青から緑系の色をしている場合が多い。 |
稀土類 | スカンジウム、イットリウム及び15種類のランタニドの計17種類の金属元 素の総称。ガラスの添加剤としてそのうちのランタン、セリウムなどが使用 される。 |
アルカリ土類 | ガラスの添加剤などにも使用されるハロゲン化物結晶のひとつ。CaF2、MgF2 、BaF2などがある。 |
アルカリ金属類 | ガラスの添加剤などにも使用されるハロゲン化物結晶のひとつ。Kcl、LiF、 KBr、NaFなどがある。 |
非球面レンズ | 一般にレンズは球体の一部を切り取った形をしているのだが、レンズにな った時、中心を通った光と周辺部を通った光とでは焦点の位置が違うとい う球面収差が発生することから、レンズの曲率を変化させて焦点を一致させ るようにしたレンズ。 昔は研削で製作したので加工難易度が高く、高価なレンズだったが、近年 ではモールドで作られるようになり廉価版レンズでも採用されている。 |