ContaxとZeissT*のこと

第70話  謎のG人気

久しぶりに名古屋に行ったついでに、いつものトップカメラへ寄ってみた。売りに出していた品はまだ買い手が付いていなかった。
しかし、ヤシカコンタックスのコーナーも寂しいものだ。あのRTSVでさえ、そこそこ美品が5万台で買える。なぜにカメラファンはフィルムカメラを見限ってしまったのかと、情けなくなる。
いつの時代も、良いものは高くても売れるというのが、商売の王道であったはずなのに、高品質を誇るツアイスレンズはもうたたき売り状態である。
結局はAFとデジタルがカメラを家電におとしめ、趣味の世界から追放してしまった。
かくして写真は画像処理を競うだけのつまらない数値至上主義に埋没してしまった。
たしかにデジカメは楽ちんだし、撮影ミスも少ないし、それなりに撮れるし、といいとこだらけに見えるのだが、かつてフイルムカメラを構えていた自分と、デジカメを手にした自分とでは、撮影に臨む気持ちに大きな差がある。
それを気持ちの余裕と見るか、たるみと見るかは、意見の分かれるところだけれど、自分に限って言えば、気持ちのゆるみというのは、被写体に対して失礼なのかなと思う。
やはり写真を撮るには「弐の矢はない」と自分を追い込み、緊張して自分の画を風景から切り取るという、儀式的な気構えが必要なのではないかと思う。
話がそれたけれど、今回トップカメラへ行ったのには理由があった。フジのGF670がないかなと思って見に行ったのだ。
デジカメ全盛の時代にあえて開発されたフィルムカメラ。フジフィルムの意気やよし。
こういうカメラは応援したい。しかもこのカメラ、かつて自分も使っていた「プラウベルマキナ」にとても似ている。
うーん、欲しい。レンズはいわゆるフジノンタイプでなくプラナータイプ、4群6枚構成だ。
解放f値3.5からして、無理のない設計となっているのだろう。非常に期待できるカメラだと思う。
なぜこのカメラに注目しているかというと、やはり自分の撮影シーンである山にぴったりのカメラだからだ。このカメラを持って、また山に登ってみたい。
しかし、トップカメラにGF670は展示されていなかった。残念。
そのあと何気なく、Gの45mmが出てないかと思い、コンタックスのコーナーを見に行って、ぎょっとした。
以前あれほど並んでいたGシリーズが、あらかた売れてしまっている。
この現象はなんだ?
レンズは以前なら20本ほど並んでいたのが、数本しかない。バリオゾナーとゾナー90mm、プラナー35mmくらいしかなく、ボディもG1G2合わせて4〜5台しかない。
この異常なG人気はなんなのだろう。
自分自身、最近はレンジファインダー機のG2を使う場面が多いのだが、フイルムカメラに回帰する人が増えてきているのかもしれない。
それ自体はいい傾向だとは思うのだが、安いうちにいろいろ買おうと思っていたのに出鼻をくじかれたようなものだ。やられた。
ブラックのG2もなかなか手に入らないし、心のもやもやは晴れない。
(2009.11.9)