ContaxとZeissT*のこと

第61話  業界の再編とツアイス

デジタル化の波は35mmフィルムカメラを駆逐し、ついには中判カメラの世界まで侵食しようとしている。
あのマミヤOPが光学事業をコスモ・デジタル・イメージングという会社に譲渡してしまったのだ。とりあえずマミヤブランドは新会社が引き継ぐということになったらしいが、これはコンタックスというブランドを京セラが使っていたというのと同じ意味な訳で、不採算部門(少なくともフィルムカメラ部門)はいずれ整理される可能性もある。

去年コンタックスが消えた理由のひとつに、光学事業を引き継いだのが同業メーカーではなかったこと、というのが挙げられると今でも思っている。他業種の経営者では光学機械というものに対する思い入れは少ないと考えられるからだ。今回のマミヤもその轍を踏むような気がしてならない。
これに対して、コニカ・ミノルタはSONYに事業を明け渡した。ソニーはもともとが東京通信工業という通信機器メーカーだった訳だが、今ではロボットなどもやっているから機械の心は残っていることだろう。そう考えていたら、αアルファというブランドを立ち上げ、レンズマウントを継続するという発表を行った。技術者の心は少しなりとも引き継がれた訳だ。
こういう面ではコニカ・ミノルタは正しい選択をしたのかもしれない。

一方のツアイス陣営はと言えば、もともとプロフェッショナルユースの機器類が多くて、需要は少ないものの安定した分野で事業を行っており、リスクの高い(浮き沈みが激しそうな)部門は外注とか、設計・監理のみ参画するとかいう体制でやっているような感じがする。
直属のカメラ部門はすでに1970年代に整理してしまっているから、今フィルムカメラが無くなったとしても、さほど影響はないのだろう。
ツアイスはその歴史の長さと膨大な部門の技術の蓄積が大きな下支えになっていることは間違いなく、実際に製品を作るのみならずメカトロ分野のコンサルティング業務だけでも生きていくことは出来る。
それにツアイスというのは、会社でなく財団なので、簡単に消滅したり統合されたりということも無い。つくづく創設者達は先見の明があったのだなと感心する次第だ。

ところで、コニカ・ミノルタから業務を受け継いだSONYは、カールツアイス銘のレンズを使っている。ではコニカ・ミノルタの流れを引く新αシリーズのレンズ名はどうなるのか?
まさかコシナに続いてツアイス銘で出るのではないかと期待してしまう。ミノルタ系のレンズには評価の高かったものも多いし、コニカミノルタ製でなくてもニコン用みたいにαマウントでコシナが供給してくれてもいいのだけど。
国内の光学業界というのは、結構仲が良いというのが有名で、他社製でも辿って行くと設計や製造工場が同じというようなことがよくある。ツアイスも最近は100%ドイツ本国設計が少なくなりつつあるようで、設計審査だけやっているのも多いように思われる。
いつの頃からかこのような体制になったのか知らないが、少し寂しい気もする。
せめて「全品検査」だと言うツアイスブランドの、品質に対する信頼を無くすようなことはしてほしくないとおもう今日このごろです。
(2006.4.21)