ContaxとZeissT*のこと

第5話  T2の話し
長いこと、RTSとSTを使っていた。
しかしその頃、僕は結婚することになった。
嫁さんは旧い「フジカ」を使っていた。新婚旅行では何とか使えたが、しばらくし
て、完全に壊れてしまった。
カメラ買おうかと話しをしたが、その頃嫁さんは妊娠していることが分かった。
妊娠、出産、お子さまとくれば、スチルカメラではなく、ビデオだ。
スチルカメラの話はなくなってしまった。
僕はビデオカメラを買いに行った。予算は20万。地元で買えばそんなものだった。
しかし、僕にはあてがあった。
名古屋で買えば安い。
そこで名古屋へ出かけていき、同じものを買った。16万8000円だった。
ここで、僕はひらめいた。
お釣りが32000円出たということは、このお金を運用する権利は僕にある。
さっそく嫁さんに電話を掛けて交渉した。
「お釣りに自分で追い金するからカメラ買うよ」
嫁さんの返事は「OK」だった。
交渉成立で僕は勇んでコンタックスのコーナーへ向かった。
「ただし私にも簡単に使えるものをね」という、条件をクリアするコンタックス。
それはT2しか存在しなかった。当時T2は「高級コンパクトカメラ」の地位を独占し
ていた。色はシャンパンゴールドというかチタン色が受けていたが、皆と一緒では
つまらないので、僕はあえてチタンブラックにしたのだった。
幸いにも嫁さんはT2を気に入ってくれて、バッグに入れてあちこちへ持って行って
いる。
T2を使っていると、カメラ好きが寄ってきた。
「いいカメラですね」と声を掛けられたりもした。嫁さんもびっくりしていた。
シャッター押すのを頼むと逆に、「いいカメラ触らせてもらってありがとう」とまで言
われた。コンタックスT2というのは、一般に認知された初めてのコンタックスだった
のではないだろうか。

しかし、T2というのは不思議なカメラだ。普通に撮ればただのバカチョンカメラ。
しかし真剣に撮ろうと思うと、意外に難しい。レンジファインダーだから仕上がりが
予測できないという難しさがある。
いずれにしても、こうして僕はコンタックスユーザーを1人増やしたのだった。