ContaxとZeissT*のこと

第43話  ツアイスのレトロフィットAF

何を隠そう、僕はレトロフィットなものに非常に興味を持っている。
昔のものでも大切に使えば、現在においても遜色ない性能を示すものは少なくないし、古いものの方が良いという場合も少なからずあるのは事実だろう。
少し手直しするだけで現在でも使うことが出来れば、買い直しという無駄なお金を使うこともない。
ニコンのカメラは頑なに「Fマウント」を守っている。本当はニコンだって新しいマウントに乗り換えて、キャノンに一矢報いたいところだろうが、Fマウントという膨大な遺産を大切に使い続けている人は居るわけで、その人たちをバッサリ切り捨てるのは出来ないという、情にもろい日本的な会社なのだなあとも思う。
その点キャノンはその対極にあるのだろう。FDレンズ群をバッサリ切り捨て、マウントの変更を断行し成功させてしまった。この機動力と先進技術がキャノンをトップメーカーに押し上げたのだろう。そしてヤシカ−京セラはというと、ツアイス伝統と言っても良い、新しいマウントを次々と繰り出す作戦で、ユーザーも付いていくのが大変なのである。
でもヤシカ−京セラの面白いところは、一方的に切り捨てる訳でもなく、マウントアダプターというレトロフィットな製品が結構多いのである。M42−MFマウントからMF−ハッセルアダプター、G−MFマウントアダプター、Nにしても645アダプターをラインナップしている。
そのレトロフィットアダプターの中で最も変わり種なのが、「AFコンバータ」だろう。コンタックスのAFと言えば「AX」にとどめを刺すが、あれも言ってみれば究極のAFアダプターなのだろう。
しかし、京セラにはもうひとつのAFが存在した。それがこのAFコンバータ1.6Xである。



このAFコンバータが取り付くカメラは、京セラ−ヤシカブランドで販売された、230AF、210AF、200AF、270AF、300AFなどの機種で、このコンバータを介することによりツアイスMFレンズがAFになるのである。うその様なほんとの話し。(但し使用可能レンズに制限があり、使えるのは別添の表のレンズ)
他社ではこんなものは見たこともない。コンタックスAXも発想としてはこのレトロフィットAFが元になっているのかも知れない。理屈はボディを動かしたか、レンズを動かしたかという差だけで、考えとしては非常に似ている。
このコンバータはコンタックスユーザーからはほとんど無視されたような存在ではあるが、「AFムター」としてMFマウントのAF機も出してもらいたかったくらいだ。
ただ、時代はデジタルに移ってしまったので、その夢はもう叶わないのだろう。
せめてレトロフィットなデジタルバックを売り出してもらいたいものである。
(2004.2.9)

別添 AFコンバータで使えるツアイスレンズ
D21f2.8、D25f2.8、D28f2.8、D35f2.8
P50f1.4、P50f1.7、P85f1.2、P85f1.4、P100f2、P135f2
S85f2.8、S100f3.5、S135f2.8、 S180f2.8(※)、AS200f2
TT200f3.5、TAT300f2.8
VS28-85f3.3-f4、 VS35-70f3.4、 VS40-80f3.5、 VS70-210f3.5
MP100f2.8
※S180は初期のフローティングでない玉のみ