ContaxとZeissT*のこと

第40話  標準の発色という話し

写真というのはフィルムに何種類もの感光材料が塗布してあるから、さまざまな色が表現されるわけなのだが、では何をもって標準的な発色であるという議論については、それこそさまざまな意見があると思う。
当然これはフィルムだけの話しではなくて、レンズの話しでもある。色収差の話しは当然出てくるし。
なぜこんな話しを持ち出したかと言うと、久しぶりに使ったニコンレンズの「プラウベルマキナ67」は同じ中判の「ハッセルブラッド=ツアイスレンズ」と全く違う発色をしていて、もしニコンの発色が絶対優れているというのであれば、ツアイスの発色は一体なんなんだ、という話しになるわけだ。
ただし、マキナのニッコールレンズはニコンの標準的な発色というわけでもないらしい。一般的には発色の面では良くない評価をされているようだ。まあ、傾向は似ている。日本のレンズはツアイスに比べるとマゼンタが強いように思える。キャノンなどは特にそうだろう。逆に言えばツアイスがアンバー系に偏っているとも言う。JISの標準からするとツアイスレンズは確かにアンバー寄りなレンズが多い。しかしながら、当然JISの許容値内には収まっているのであるから、あからさまにダメだとか、あの発色は嘘だと断定するのも大人げないだろう。
いろんな発色をするレンズがあったっていいじゃないかと思う。それが嫌なら自分が使わなければいいだけのこと。みんながみんな同じ顔にならなくたっていいと思うけどね。それが個性というものだろう。
撮影する側から見ても、被写体によって合うとか合わないというのもある。フイルムなどはあからさまに「風景向け」とか「きれいな肌色」とかを主張している。レンズだって主張してもいい。ちなみにマキナは階調がよく出るし、肌色も日本人好みのピンクが良く出る発色なので、ポートレートや風景にいいのかなと、個人的には思っている。ガウスタイプだけれどプラナーとはボケ方が違い、ゾナーに近い表現をする。カリッとした明るい背景が好きな人には向かないかもしれない。重厚感のある雰囲気を求めるならはまりレンズかなと思う。
ハッセルのプラナーは発色としてはアンバー寄りかもしれないが、RDP3ならまあ普通の発色になると思う。標準的な発色を追求するならエクタの64使えばいいが、ブツ撮りや科学写真ならいざ知らず、標準的な発色というのはインパクトに欠けると思う。特徴がないんだね、やっぱり。
アマチュアで撮ってるという前提で言えば、特徴のある発色の方が受けがいいと思う。無理に背伸びしてプロの感性に合わせなくても、アマチュアっぽい写真でもいいじゃないかと考えている。(2003.11.13)