ContaxとZeissT*のこと

第33話  非球面レンズの話し

ディスタゴン35mmのf1.4を買った。ずいぶん前から欲しいとは思っていたのだが、中古でなかなか良いものが無く保留にしていたのだが、最近Nシステムに乗り換えた人が多いのか、けっこう球数が出てきて値段もこなれて来たので買う事にしたのだ。
ところでこのレンズAEGなのだが、発売当時としては画期的なレンズだった。というのも、このレンズにはさまざまな細工が施された「ハイテク」レンズだったのだ。
最たるものが、非球面レンズの採用だろう。
当時は非球面レンズを使うメーカーはツアイスとキャノンくらいしかなかった。加工が非常に難しかったということもあるけれど、理論上は確かに良くてもコストや精度との折り合いが付くのか疑問視されていた。当時は非球面と言っても切削加工で、その製造管理はかなり難しいものだったと思う。
ところが現在の技術は進み、非球面レンズも切削からモールド製造へと変わり、普通のレンズにも大量に使われるようになった。コストもかなり下がったはずだ。ちなみにディスタゴン35mmもMMタイプになってからモールド化されたらしい。
コンタックスのMFレンズで非球面を採用しているのは、このディスタゴンと28−70のズームだけ。28−70のズームは新しいレンズなので、1970年代からあるのはディスタゴン35mmだけだ。先駆者というのはいつの時代でも苦労しているものだろうが、うちのレンズを透かした時に見える切削跡を見るとその苦しんださまが偲ばれる。
このディスタゴン35mmを初めて使ってみた。まず驚いたのはそのファインダーから得られる情報量のすごさ。ぱっと見てこれは凄いと思わせる画質。非球面レンズというのは球面収差を除去する目的ということはわかるが、これがその効果なのかと驚くほど。まあ実際はフローティング機構なども付いているのでそっちの話しもあるかもしれないが、非常に鮮鋭な画像であった。実際に撮影してもフレアは少ないし、シャドウ部の階調もきれいに出る。期待を裏切らないレンズだ。
レトロフォーカスの広角レンズもいいじゃないかと思う。
(2003.1.4)