ContaxとZeissT*のこと

第32話  発色の謎を解明する

実は夏に沖縄へ行って写真を撮ってきたのだが、ひとつ気付いたことがある。
沖縄で撮った写真の色がふだん撮る写真と全く違うのである。というのは、色が鮮やかすぎるというかコントラストが強すぎるくらいなのだ。
このことからそひとつ思い出した話がある。
例の「ツァイスはヨーロッパの光の中で生きますよ」という言葉である。これは、事実としてヨーロッパで撮ると色再現がニュートラルに写るという、ツァイス七不思議のひとつだ。
しかし、沖縄の話でひとつの話しを思いついた。それは沖縄のタクシーの色について記述されたものだ。そこには、「沖縄のタクシーの色がどぎついのは、沖縄の光に負けないようにするためだ」というようなことだった。
沖縄とヨーロッパ、そして僕の住んでいる本州。何かがあるぞとピンと来たのだ。
その違いを考えてみてツァイスの色再現が理解できるいくつかの事項が浮かび上がってきたのだ。
まず、緯度だ。沖縄は北緯26゜くらい。本州は北緯30゜から40゜、ヨーロッパは北緯40゜から60゜近辺にあるのだ。
その次、黄道からの距離。これは沖縄が最も近く、ついで本州が近い。ヨーロッパはその距離と倍以上離れている。
そして地軸の傾き。地軸の傾きは四季と関連が深いが、四季というのは当然太陽との関連があります。
これが光の何に影響を与えるか?
まず光の入射角。地球は丸い。それゆえ太陽に一番近いポイント(つまり黄道の場所)はほぼ垂直に光が地面に到達するわけだ。しかし、緯度の高い方もしくは黄道からの距離が遠いところだと、地面に直角には光が当たらないことになる。つまり、大気圏の厚さが一定とすれば、入射角が付けば付くほどたくさんの大気中を光が通過することになる。光は大気中をたくさん通過すると、水蒸気などさまざまな気体に当たり吸収され地表に到達する光は青系の光が少なくなっていて、代わりに空が青くなっている。青い空に照らされている状態となる。青が濃いのでニュートラルに補正してあるとすれば、日本では黄色くなるはずなのだ。
ただしこれは天気が良い時の話し。では曇天のときはどうだろう。
曇天の時は大気中の水蒸気の層(つまり雲など)にほとんどの光が捕捉されてしまう。ものの色がなぜその色に見えるかと言うと、光のスペクトルのうち特定のスペクトルの光が反射しているということなのだ。赤いりんごは赤の光成分だけ反射しほかの成分は吸収してまうから赤く見えるということ。全部の色を吸収すると黒ということ。
話を戻して、雲で全部の光が反射していると白い雲ということになる。直接光は被写体に当たらないから、白い雲の光(間接光)で照らされているという状況になる。曇天というと色温度が高いというのが常識だが、日本では晴天時ほどの差とは言えないまでもやはり色温度が低い方向になるのでないかと考えられる。
次に紫外線の影響の話し。先の条件からするとヨーロッパの方が紫外線は弱いと考えられる。紫外線が強いと写真は白っぽくうすもやがかかったような状況になる。
この状況だとすると、ヨーロッパではコントラストの強い写真が撮れるはずなのだ。この理論からすると、ヨーロッパの光にツアイスが合わせてあるとするならば、日本では紫外線が多いためコントラストの弱い写真になるはずなのだ。

どうでしょう。これが僕のツァイスの発色に対する見解ですが、どうなんでしょうか?
(2002.12.8)