ContaxとZeissT*のこと

第29話  ホロゴンという名の宝石

美術展で賞をもらった記念というわけではないが、以前から欲しかったホロゴンを買ってしまった。
言うまでもなく、ホロゴンは伝説の超広角レンズだ。今回購入するにあたりインターネットで調べて北海道から取り寄せた。中古ではあるが例のモニター品ではないことも確認した。
しかし改めてしみじみとホロゴンを見ると、本当にこれはカメラのレンズなのだろうかという疑問が湧く。常識やぶりの形、美しいブルーの輝き、神の瞳とも悪魔の眼とも形容されるのが即座に理解できる妖しい光を放っている。



でもなんでこんな形しているのだろう。そう考えたらふと「なんだ、人間の目玉と同じような形じゃあないか」と思いあたった。青い輝きはこやつが外人(ドイツ製)だからに違いない。羽根のない完全に丸い絞りも人間の瞳孔に近いものがある。

以前、名古屋のヒダカヤで昔の「ホロゴンウルトラワイド」というカメラを見たことがある。市販されたホロゴンの初代だ。あのホロゴンはもっとボディにめり込んでいて、最初見た時「どれがレンズだ?」と探した覚えがある。ボディキャップと思ったのがレンズだった。
G用ホロゴンはあれに比べればまだレンズっぽく見える。しかしそれでもこのコンパクトな姿。スナップシューターにはもってこいのレンズかもしれない。
なんと言っても、絞りを考える必要がない(f8固定)、ピントもほとんど考えなくて良い(1.5mに合わせておけば無限から0.63mまで被写界深度に入る)、露出も外部測光だがAEと、もうシャッター切るだけというまさにリアルタイムシステムなわけです。しかも得られる画像は歪みもない画像。
ホロゴンの画角は106゜、人間の片目の視野は150゜くらい。人間の眼ではディストーションは感じない。ホロゴンの画角は人間の眼には及ばないものの、世界中のカメラレンズの中で最もそれに近い性能を誇る、まさに宝石の眼とも言えるレンズだろう。