ContaxとZeissT*のこと

第26話  スターと悪役

もともとプラナー50mmf1.4から始まったツアイス遍歴だが、2002.10現在にあっての保有本数は35mm用レンズでビオゴン1本、ディスタゴン2本、プラナー3本、ゾナー4本というラインナップなわけで、ゾナーが一番多い。
これは結構意外に思える。ツアイスユーザーと言うとどうもプラナー信奉者が多く、その証拠にコンタックスの記念レンズと言うとほとんどがプラナーなのだ。(55mmf1.2、85mmf1.2、135mmf2)しかしこれらは非常に繊細なレンズ達だ。これらの超高級プラナーを完璧に使いこなしている人というのはほとんど居ないだろう。でも皆プラナーが好きなのだ。
話がそれたが、ここで言いたかったのは「皆プラナーが好きだが、使うレンズはゾナーが多い」という事実だ。最近はズームはやりなのでさらにその傾向は強いだろう。
いわば、ツアイスのイメージを支えているのはプラナーと言うスターレンズだが、それを引き立てているのは芸達者な悪役(ゾナー、ディスタゴン、ビオゴン)達という構図が成り立つのだ。だいたい、プラナーというと軽やかで清々しいイメージだが、ゾナーなんていかにも悪者っぽい響きだ。
しかし最近は正義の味方を追っかけるより味のある悪役に目が向く様になってきた。
まあこれはプラナーの価格がべらぼうに高いということもある。35mmカメラ用で同じ焦点距離にプラナーとゾナーがあるのは35mm、85mm、100mm、135mmだが、特に135mmなどは5倍以上の価格差なのだ。これらは手に入れるだけでも苦労する。
まあ例外もあって、ゾナーにも「スター」は居る。180mm「オリンピアゾナー」と200mm「アポゾナー」だ。しかしこれらはレギュラー商品で高級プラナーのように「限定もの」ではない。
言い換えれば「実用レンズ」ということなのだろう。
そしてゾナーの特徴と言えば「悪条件に強い」ということが挙げられる。僕なども山に行くにつけ、「風景にはやはりプラナーは適さない」と感じる場面が多いのだ。紅葉とか近景には威力を発揮するのだけれど、遠景はゾナーに歩がある感じがする。
プラナーはまるで無限遠がないようなほわっとした奇麗な感じなのだが、ゾナーは現実をなまなましく突きつけるような解像度を見せてくれる。
どちらの雰囲気も一長一短なのだが、山ではゾナーの方が使いやすいと感じる。でも花の写真はプラナーがいい感じで、いつまでたっても「スター」と「悪役」との縁は切れそうにない。