ContaxとZeissT*のこと

第21話  ツァイスの標準レンズ

ツァイスのレンズにもいろいろあるが、その歴史を見ると標準レンズの開発に力を注いでいたのが良くわかる。
もっともこれは当然で、一般用に広く売られるカメラに装着されていたレンズが昔はほとんど標準レンズだったからだろう。最近はズームレンズが流行だが、現在でも単焦点のコンパクトカメラは標準か準広角のものが多い。
カメラを記録写真用に使うのが主流では、やはりこういう「売れる」レンズだから競争が激しかったとも言える。
標準レンズの歴史は収差と明るさとの闘いで、より収差が少なく、より明るいレンズが求められていた。これはフィルムの性能の話しもあって、昔は感度の低いフィルムが多かった。
僕が学生の頃も、大伸ばししようと思ったら「ネオパンF」のASA25を使っていた。現在でも微粒子のフィルムは感度が低い物が多いが、最近コダクロームの25が製造中止になったことなどは、時代が変わってしまったのだなと感じた事件だった。
話は戻るが標準レンズ。フィルム面の対角線方向の画角で45゜に近いものが標準だと聞いた覚えがあるがこれは35mmカメラの場合、焦点距離で言うと50mmと55mmの中間くらいか。そんなことからこのあたりのレンズを標準レンズと言うのだろう。「準」という言葉を使えば、45mmから60mmくらいまでその範疇だと言ってもいいだろう。
ツァイスの標準レンズと言えば、真っ先に「プラナー」の名前が挙げられるが、現在も廉価版の標準レンズとしてテッサーは欠かせないし、コンパクトカメラのTシリーズではなぜかゾナーが主流となっている。テッサータイプを「パンケーキ型」と称する場合もあるようだが、しまい寸法その他の理由で使い分けがされているのだろう。
ところで、この標準レンズの使い方は難しい。レンズは標準かも知れないが、撮り方の標準というものがない。広角なら自分の眼で見た以上に広範囲の情報が記録できたりするし、逆に望遠なら部分だけ切り取ってみたという比較的分かりやすい表現になるが、標準レンズはそうはいかない。目的をはっきり見据えないとただの記録写真どまりとなってしまう。たとえスナップ撮影であっても、シャッター押した時には何か「ここだ」という動機がいるはず。
もしそうでなければ、機関銃のように撮りまくって後で選ぶということになるが、それはプロの撮り方であって、アマチュアであるなら1枚1枚コツコツと撮ってもいいんじゃないかと思う訳だけれど、実際には無意識のうちに撮ったものの方がいい場合もあるわけで、貧乏な僕は悩むわけです。
そんな訳で、50mmというのはつい考えてしまいがちになるので、最近は50mmはG1に取り付けて、1眼のほうは60mmを取り付けている。あとここに45mmでも買えば、標準レンズの中で使い分けができる訳で、おもしろいのではないかと思う。
「そんなことするなら35−70のズーム買えばいいやんか」と言われそうだが、やっぱりプラナーの画像をファインダーで見た時には感動するし(特に60とか85はすごく綺麗)できることなら、プラナーのズームレンズがあればいいのになーと思うのです。そしてテッサーとの使い良さとの比較をしてみるなんて楽しそうでしょう。
という訳で標準レンズを使いこなせない言い訳をし続けているのです。