ContaxとZeissT*のこと

第20話  顔の見えるレンズ

ツァイスのレンズを使ってきて面白いと思ったのは、そのレンズを設計した人物の話が良く出てくることだ。
カール・ツアイス、エルンスト・アッベ、オットー・ショットという創設時代の人だけでなく、それぞれの名レンズに名設計者ありと言っても良い。
プラナーを開発したパウル・ルドルフ博士、ルドルフ博士とともにテッサーを開発したエルンスト・ヴァンデルスレブ博士、そしてゾナーを開発したルードヴィッヒ・ベルテレはビオゴンの開発もしている。そしてホロゴンをハンス・シュルツ博士と共同開発したエアハルト・グラツェル博士はディスタゴンも手がけている。ほかにもすごい人がごろごろしているのである。
そんなところから生み出されたレンズが悪かろうはずがない。
翻って、日本のレンズ。残念な話しだが、キャノンもニコンもミノルタにしても、ここまで名の通った設計者は居ない。
そこへもってきて、最近は設計もコンピュータ支援によるものがほとんどで、こうなると一体誰の「作品」なのかわからないという状況だ。
日本の工業製品は昔から「設計者の顔が見えない」と言われてきた。昔はそれでも良かったのだろう。しかし技術者としてはこれはかなり可哀想な状態だ。
これは会社組織のあり方と言ってしまえばそれまでだが、最近はこのような「従順な」エンジニアばかりでもないらしい。
やっと外国並みの感覚を持ったエンジニアが現れて来たということだろうか。
技術者たるもの、もっと個性を発揮しても良いと思う。
画一的な発想からは優れたものは生まれない。柔軟な発想から次の世代に発展していくものが出現してくる。
と言うわけで、やはりツァイスというのは「職人的な」「面白い」「不思議な」レンズを生み出せるのだろう。
最近、国産ツァイスレンズは顔が見えにくくなってきた。曰く「バリオゾナーだらけ」「単なるAFレンズ」などなど・・
こんな状況は偉大な先人達に申し訳ないくらいだ。