ContaxとZeissT*のこと

第13話  ツァイスの謎

ツァイスという会社の歴史は、光学技術の歴史と言ってもいいのかもしれない。逆に言えば、ツァイスの技術がなかったら、現在のカメラ産業は成り立っていない。
現在のカメラレンズで使われているほとんどのレンズ構成は、ツァイスが開発したものだからだ。
プラナー(ガウスタイプ)、テッサー、ゾナー、ディスタゴン、ビオゴン、ホロゴンという構成のレンズは現在も製造されているが、日本を含むほとんどのメーカーがこれらのレンズ構成を採用しているのは周知の事実である。ツァイスは開発メーカーらしく、このレンズ名を使用しているが、日本のメーカーは一部のカタログの片隅に謳っているにすぎない。
しかし、レンズ構成図を見れば一目瞭然で、ツァイスで言うレンズタイプが分かってしまう。
実は、レンズタイプによりどんな画像が得られるかが、ある程度分かる。
レンズの特徴というのは、何処に現れるのか。
ネットに写真をアップするようになって、この点にすごく感心を持つようになった。
色はレタッチできる。コントラストも自由自在。解像力もシャープネスでずいぶんイメージを改変できる。
そうなると、表現力というのは、焦点距離が同じなら構図の差と被写界深度による輪郭の省略の使い方だけになってしまう。だが構図だって大きくガサッと撮って置いて、トリミングすればいいだろう、という考えを持っている人もいる。
こうなると残されたものは一つ、「ボケをどう考えるか」ということだ。
ここで、ツァイスの話し。
ツァイスというのは不思議なレンズの売り方をしている。例えば同じ85mmでも、ゾナータイプとプラナータイプを両方出している。100mmと135mmもそうだ。
実はレンズタイプが違うとボケの現れ方がずいぶん違う。
他の日本メーカーは開放f値を2種類分けているところはあるが、レンズ構成をここまで極端に変えているところはない。
これは表現力の幅という点からすると注目すべき点だと思う。そう、日本メーカーのレンズはどのレンズで撮っても傾向は似たようなものだが、ツァイスはレンズ毎に写り方が違うのだ。
なぜこのようなラインナップなのか。
一度ツァイスに聞いてみたい謎だ。